光の家の2階大広間は図書館に変化 華奈にやさしい光
光は、その厳しい顔のまま、立ち上がった。
あ然として見ているしかない巫女たちを振り向きもせず、2階への階段をのぼり始める。
それでも由香利が光に声をかける。
「ねえ、光君、自分の部屋に入るの?」
その光からの返事は、意外なもの。
「いや、2階で調べたいことがあるの、本を読むだけ」
由香利は、再び光に声をかける。
「ねえ、私も行っていい?」
光はようやく振り返って巫女全員を見る。
「いいけれど、騒がないで欲しい」
「そういうの読書とか思考の邪魔」
その表情は、厳しいままになっている。
由香利は、そのまま2階への階段をのぼった。
由紀はすんなり立ち上がった。
「ねえ、光君、騒がなければいいかな」
光が頷くと、由紀。
「光君のお家の大広間の蔵書、興味あるの、源氏も和歌もたくさんあるんでしょ?」
その由紀の言葉に、光の顔がようやく和らぐ。
「うん、それはたくさんある」
由紀は、にっこり。
「じゃあ、見たい」
そのまま光を追って、2階への階段をのぼっていく。
由香利と由紀に出遅れてしまった他の巫女は、困惑でなかなか立ち上がれない。
それでも、ルシェールが場をおさめた。
「光君が騒がなければいいっていうから、行きましょう、たまには読書でも」
さて、巫女たちが全員、2階の大広間に到着した時点で、光はリモコンを操作。
すると壁一面が開き、四方全ての壁が書棚状態になる。
また、少し手前に大ソファと大テーブルが持ち上がり、まるで図書館のような雰囲気と化す。
華奈は、大広間全体を見回し、内心思った。
「こういう難しいような本好きになると、文学少女になるのかな」
「ラブコメばかりだと、イマイチかなあ」
「うーん・・・でも、活字ばかりだと、3分で居眠りする」
「だから呪文を覚えられない」
「でもなあ、光さんと同じ音大に入るには、ヴァイオリンは下手で無理」
「お母さんみたいに音楽史とか音楽理論で活字を読まないとなあ」
「その学部しか入れないし・・・」
そこまで考えが進んだ時点で、華奈の顔がパッと輝いた。
そして、光に向かってダッシュ。
「ねえ、光さん、音楽史とか音楽理論の本はあるの?」
光は、素直に「うん」。
その顔もやさしい。
「華奈ちゃんの家にもあると思うけれど、探してみようか?」
華奈は、ますます顔を輝かせる。
「はい!光さんが探してくれた本なら、毎日頑張って読みます!」
少々難しい顔だった光が、ようやく笑った。
「うん、じゃあ、一緒に探そうよ」
「華奈ちゃんも同じ音大なら楽しいから」
その光の言葉で、華奈は天にも昇るような幸せ、他の巫女は顔をしかめている。




