激突 春奈vsソフィー 光は厳しい顔に変化する。
光たちの一行の京都行き計画も、ほぼ決まり、大型モニターから圭子と楓は消えた。
光と候補者世代巫女たちは、ノホホンとなっているけれど、年上巫女の春奈は、どうもソフィーが気に入らない様子。
春奈がブツブツと文句を言い始める。
「ソフィー・・・さっきの言い方は何?マジに気に入らない、珍しく座禅をして足がしびれただけでしょ?それを巫女として言語道断って、言い過ぎだよ」
しかし、ソフィーもさるもの、「はいはい」とは謝らない。
「そんなことを言っても事実でしょ?ちょっとばかりの座禅で足がしびれるなんて、自覚不足、鍛錬不足としか言いようがないもの」
「まあ、ルシェールはフランス人だし、そこまでは言わない」
「華奈ちゃんは、未熟そのものだから、許してあげる」
春奈とソフィーの口争いが飛び火したルシェールと華奈は、この時とばかりに光の両脇に、光の「まあまあ」という、「なだめ発言」を待つ。
ただ、春奈も簡単にはおさまらない。
「私はソフィーみたいな剣道してないし、座禅なんて無関係で育ったの」
「一体何?一緒に羊羹と抹茶できなかったヒガミ?そうでしょ?」
ソフィーは、そこで「うっ」と詰まる。
けれど、即反撃開始する。
「それは当たり前でしょ?どうして自分たちだけで楽しい思いをしてさ、私が急いで羊羹店に行ったら、階段を降りて来るの?」
「少しは、お仕事をしているソフィーが大変だなあとか、待っていてあげようとかさ、そういう思いやりのカケラがないの?」
「それにさ、座禅で足がしびれて、ひ弱な光君にしがみついて起こされる?」
「ただ、抱きつきたいだけでしょ?マジ?年甲斐もない!」
「教師として問題あるって!」
春奈は、しかし余裕。
「ふん!そんなの抱きついたもの勝ちなの」
「それに、あくまでも学園内では厳しい教師」
「家庭内では、前世では一番妻だったことが多い、本当の妻だもの」
「マジで違和感がない、光君の身体、ずっと抱っこも抱かれても、いいなあ」
「ソフィーなんて、たまにあるだけでしょ?」
ここまで言って、春奈は光に話を振る。
「ねえ、光君もそう思うでしょ?」
その光は、そんな話を振られて実に困った。
何しろ自分を見つめてくるのは、春奈とソフィーだけではない。
全ての巫女が、「異様に厳しい目」で自分を見つめてくるし、両サイドのルシェールと華奈は、思いっきりその身体を押しつけてくるのだから。
「このまま寝たふりはできないだろうか」
まず光が思いついたのは、これだった。
しかし、それはすぐにあきらめた。
「だって、僕は目を開けているし、寝てしまうと実に不自然」
ただ、光は、何よりこういう状況が面倒で仕方がない。
「春奈さんも、ソフィーもメチャ怖いしなあ」
「ふむ、この状態を脱するには何か・・・」
「ああ、考えるだけで面倒」
とまで思いが進んで、出た言葉は光には珍しい実にマトモなものだった。
「あのさ、そもそもの質問としてね」
「僕に抱かれるとか、僕を抱くとかの話に、座禅と羊羹から、どうして飛び火するの?」
その光の発言に、まず、言い争いをしていたソフィーと春奈が、虚をつかれたかのように、「ウッ」と詰まる。
すると、その春奈とソフィーの表情を見た光が、またしても珍しく実に厳しい顔になっている。




