京都旅行に禅寺修行が加わるようだ。
圭子の話は続く。
「どうやら上賀茂、下鴨神社は決定済みで、大原もかな」
「東山の八坂神社、清水、知恩院も行くよね」
「それと、お願いした伏見稲荷」
「他にも見どころは多いけれど・・・」
圭子は、そこまで話して光の顔を見る。
「ねえ、禅寺は行くの?」
光は、少し考えて答える。
ただ、その顔はイマイチ浮かない。
「うーん・・・以前ね、鎌倉の明月院で座禅したんだけどね」
「その時は、春奈さん、ルシェール、華奈ちゃんと行ってね」
「僕は何とも無かったんだけど、他の人が・・・」
圭子は、フンフンと春奈、ルシェール、華奈の顔を見るけれど、その三人の顔もどうも浮かない。
そして圭子は、その顔が浮かない理由を読んでしまう。
「つまり、同行の巫女さんたちは、座禅で足がしびれてってこと?」
春奈、ルシェール、華奈は、最高位の巫女圭子の読みゆえに、何も反論出来ず、顔を下に向けるのみ。
圭子が、フフンと笑った。
「それで、三人とも光君にしがみついて、抱き起されたと」
「光君は、それが実は面倒だった」
「そのうえ、巫女さんが増えて、全員抱き起すなんて、もっと面倒ってことだよね、光君」
光も、それは図星、素直に頷くのみ。
そんな問答の中、ソフィーが口を開く。
「圭子さん、光君はともかくね、今回の戦いは、間違いを許されないと思うんです」
「そのような緊張を強いられる中、少々の座禅で足がしびれるなど、巫女として言語道断と思うのです」
「精神統一の力を強化するためには、是非、禅寺修行が欠かせないと」
そのソフィーの言葉に圭子は満足そう。
「はい、さすがソフィー、自分の中の雑念を座禅により振り払う」
「余計なことを考えずに、一心に自己の内奥を見つめること」
「ソフィーは、やはり剣禅一如の世界で育ったことはあります」
ソフィー以外の巫女も「座禅修行希望」があるようだ。
由香利
「私も好きだよ、座禅、悩んだ時に組む時ある、京都の名庭園を見ながらの座禅もいいかも」
由紀
「子供の頃から、鎌倉円覚寺の座禅会に通っていたから、全く抵抗はありません、由香利さんの言う通り、名庭園の前がいいなあ、天竜寺とか」
柏木綾子
「はい、面白そうです、経験はありませんが、是非に」
外国人巫女たちも、興味津々の感じ。
キャサリン
「とにかく姿勢を正しく、息を整える、剣の道の基本です、私も座禅したいと思います」
サラ
「これでキリスト教と禅宗の交流には歴史が深いのです、私もお願いします」
春麗
「我が母国からも、数多くの僧侶が禅の師匠として来日したことは知っています、その足跡を尋ねたいですし、御霊に感謝する意味でも、是非禅寺にて座禅修行をしたいと思います」
こうなると多勢に無勢、光、春奈、ルシェール、華奈は、禅寺行きを拒絶することは、難しいようだ。
特に光は、面倒そうな顔。
「どうせ全員、しびれを理由に、すがってくる」
そして思った、
「万が一楓ちゃんが来ても、楓ちゃんだけは、抱き起さない、重そうだし」
楓が聞けば泣いて怒りそうなことを、真剣に考えている。




