またしても光の無粋発言に、楓が怒る
「光君・・・」
楓の声が低い。
その異様な低さに、巫女たちは全員緊張が走るけれど、光はやはりキョトン顔。
いつもののん気な声で楓に応える。
「あ、楓ちゃん、おはよう」
と、そこまではよかった。
しかし、その次の言葉が、実に問題があった。
「最近、また食欲増したの?前よりふっくらしたみたい」
光のその言葉の時点で、光の周囲を固める巫女たちは、全員が「耳栓」。
つまり楓の「お怒り超大声大暴言」に備えている。
しかし、まだ楓の声は低い。
「・・・そのふっくらしたとかさ・・・」
「朝ごはんがどうのこうのとかさ・・・」
少しずつ、楓の胸がふくらむような感じ。
息を深く吸い込んでいるらしい。
その様子をしっかりと見た光の周囲の巫女たちは、少しずつ後ずさり。
ただ、光は、まだキョトンとしたまま。
楓の変化に、全く気がつかない。
そして、光が、またしても無粋な言葉を楓にかける。
「何か機嫌が悪そうだけど、朝ごはん足りなかったの?」
「今度からお茶碗でなくて、お丼にしたら?」
その「お丼」発言が、楓の限界だった。
そのまま恐怖の楓の「お怒り超大声大暴言」が開始された。
「こ・・・らーーーー!」
「この大アホの光君!」
「うら若き乙女の私にふっくらした?丼でご飯を食べろ?」
「それから何?楓ちゃんは質より量って!」
「懐石料理ではなくて、カツ丼大盛?どういうこと?」
「ひ弱な光君なんて、子供サイズのカツ丼だって残すでしょ?」
「それを何?」
「お子ちゃま以下の光君、どーしてそんなことを言うの?」
「どこまで女の子に無粋な発言を繰り返すの?」
「何度言ったらわかる?このアホ!」
「そーいうこと言うから!私が光君の家に住んで、再教育をしたいって言うの!」
楓の暴言は、光では終わらない。
その表情を厳しくして、光の周囲でウロタエている巫女たちにも向かう。
「もうね、貴方たちには、光君のお世話任せられない!」
「どーして、そんなに頭数を揃えていながら、光君の女性教育一つ出来ないの?」
「頭数だけいればいいってもんじゃないの!」
「それに自分たちだけで、銀ブラして超高級羊羹と抹茶?」
「その後は、超高級懐石?」
「おまけに銀座と音大で光君の演奏付き?」
「いい?私なんてね、奈良なの」
「それも鬼母に監視されてさ、栄養管理されてさ・・・」
「でも足りないから、コロッケとお稲荷さんは、別途自分の財布だよ」
「ひどくない?これ!」
少しずつ楓の発言に錯乱が見られた時点で、光がまたわけのわからない発言。
「楓ちゃん、カツ丼嫌いになったの?」
「それよりナポリタン特盛のほうがいいの?」
「ラーメンとチャーハンの半分でなくて、両方大盛とかは?」
その光の発言を受け、楓は再び真っ赤な怒り顔、光の周囲の巫女たちが震えだした時点で、大型モニターの画面に楓の母、圭子が顔を出した。
そして、その圭子は、何故か稲荷寿司をお皿に乗せて持っている。




