表面上は平穏で順調な日が続く。
銀座歩きと音大訪問の後は、平穏な日々が続いている。
巫女たちは、和気あいあいと得意料理を作り、光の食欲もほぼ順調。
料理が苦手な華奈も、懸命に料理を習い、皮肉が多い春奈からも「まあ、普通の女子高生並になった」と認められる状態まで、進歩した。
学園の音楽部の練習も順調。
超大型の難曲「マーラー第二交響曲復活」の練習は、外国人巫女キャサリンによる金管楽器指導、サラによる弦楽器指導、春麗による木管楽器指導により、時々聞きに来る大指揮者小沢も思わず指揮台にのぼりたくなるほどの、仕上がりを見せている。
また、同交響曲の合唱部分も、合唱部部長になった由紀の的確な指導で、ますます光の指揮するオーケストラの響きをさらに膨らませ、美しさを増している。
また巫女たちの懸案だった「光と同じ音大に転入、推薦入学」についても、大指揮者小沢、大ピアニスト内田の推薦を学長が認め、円滑に決定。
ただ、少々演奏技術に難がある華奈は、その母と同じ「音楽史、宗教史、音楽理論」部門での推薦を目指すことになった。
そして光をゲットしたい巫女たちの動きも、表面上は平穏。
その理由は、「地球をまるごと破壊するような大隕石対策で、光は超大変、恋愛どころではない」ということ。
巫女たちにとっても、光に余計な神経を使わせてしまって対策が不十分となり、万が一地球丸ごと隕石に破壊されてしまったら、確かに光との恋愛どころではない。
そのため、以前とは異なり、光に対しては相当に神経を使うような状態の巫女もいる。
嫌みタラタラ系の春奈は、
「もう二度と光君にアホとは言わない、襲わない、若い巫女に嫉妬しない」
と、超まじめになる。
観音力のソフィーも、今までのような手厳しい対応を光にはしない。
「隕石回避まで竹刀で光君の脳天を打とうとは思わないことにする」
「膝枕の時に、お腹が鳴る音を聞かれても、引っぱたかない」
ルシェールは光を叱るタイプではないので、あまり変わらない。
「まずはマネージャーの勉強しないとね、それとデヴューのスーツを作ってあげたい、そうなると全身くまなく採寸、ふむふむ楽しい手作業だ」
そのルシェールに由香利は少々対抗。
「そういえば、親父が光君の紋付き袴を作りたいって言ってた、私が縫うかな、一家の新年会に出したいみたい、これは地元の大親分の意向だしさ」
由紀は、実に冷静。
「だって、光君が一番自然な顔をするのは私だもの、ずっと一緒でも気疲れがしない、その状態を長引かせるのが光君の力を十分に発揮できる重大な要素で、私に課せられた使命と思う」
そんなことを他の巫女も、それぞれ思っているけれど、当の光は実に「のん気」。
「超大盛のナポリタンを食べたい」
「がっつりカツ丼でもいいかなあ」
「復活を振ると、メチャ体力を使うんだ」
「豪快焼き肉丼でもいいかなあ」
など、スタイルを気にする「お年頃巫女への禁句」を連発する。
華奈は、そんな光が不安。
「どうせ食べきれないのに、その半分も」
「小食の光さん、どうかしちゃったのかな」
柏木綾子は、別の分析。
「おそらく光さんは、どこか緊張がある」
「確かに阿修羅が光さんを支えてはいるけれど、万が一自分のミスで地球が壊滅するかもしれない、それがプレッシャーなんだと思う」
その柏木綾子の分析にキャサリンも同意。
「うん、プレッシャー、ストレスがゆえの、過食願望かな」
サラも頷く。
「たくさん食べて、寝てしまいたいのかな、それほどストレスが強い対策なんだ」
春麗はため息。
「かと言って、私たちは支えることしかできない、阿修羅でないと対策も対応も無理」
そのような表面上は平和そのもの、しかし迫りつつある地球壊滅の恐怖と不安の中、光と巫女たちの生活が続いている。




