音大からの帰りの車中では様々
光と巫女たちは、由香利の父と、その子分の運転するキャデラックに分乗、杉並の自宅へ帰ることになった。
ただ、光はいつもの通り、キャデラックに乗り込んだ途端、スヤスヤと眠ってしまった。
その光を支える由香利は、上機嫌。
そのまま光の頭を自分の太ももに乗せる。
「ふむふむ、なかなかこの視点で見る光君は可愛い」
「今まで、これをやってこなかったことが実に悔やまれる」
「ソフィー、春奈さん?実に年増だ」
「光君にしても、私の太もものほうが心地良いに違いない」
ただ、一緒に同乗したキャサリン、サラ、春麗は様々。
キャサリン
「光君は単なる演奏疲れに過ぎない、確かに由香利さんは立派で尊敬するけれど、当の光君は誰の太ももかも理解していないはず」
サラも厳しい。
「ふくよかさでは、私が勝る、上半身にしろ、お尻の安定感にしろ、そうなると寝やすいのは私」
春麗
「私のような華奢な体型の女の子が、光君みたいな美少年を膝枕するのも絵になるかな、とにかくチャンスは必ずある、今は先を越されただけ」
光と巫女たちは、そんな状態であるけれど、由香利の父、江戸の大親分は改めて光のすごさに舌を巻いている。
「演奏は全て神がかり、確かに阿修羅の宿り子であるけれど」
「銀座の大財閥退治、全国テレビ局の大幹部も光君の力を知らず逆上して結局は墓穴を掘る」
「やはり神霊界でも最強の阿修羅、人間などが勝てる相手ではない」
また、違うことも考える。
「そんな強い力を秘めた子が、母親の哀しい最期の原因を作ってしまった」
「もちろん、光君に責める理由はないけれど、光君は自分の責任と考え、そこから抜けだせない」
「おそらく、一生背負い続ける苦しみと哀しみなのだと思う」
さて、別のキャデラックに乗り込んだソフィーはため息。
「全く・・・人間界とはいえ、大物退治を1日に2件?」
「それも岩崎華と竜輝は、光君が目で睨んだだけ」
「竜輝の父は、怒りのあまりの自業自得か」
「どっちにしろ、当分は立ち上がれないね、財閥当主も竜輝の父も」
同じキャデラックに乗る春奈は、焦っている。
「やばい、光君が由香利さんに取られた」
「最近、負けがこんでいる」
「挽回の機会のきっかけすらない」
「さすが江戸の大姉御だ・・・って・・・」
「じゃあ、私は年増だからお払い箱?」
「何とかして家に戻ったら光君にスリスリして挽回しないと」
また同じキャデラックに乗るルシェールは冷静。
「今の大学を退学して、光君の音大の編入試験を受けよう」
「どう考えても光君が世界デヴューする時のマネージャーは私」
「光君も、すんなりOKする、だって英語は苦手だもの」
「ふむふむ、妻兼マネージャーか、1日中一緒だ、これは楽しい」
早速タブレットを取り出し編入試験を調べている。
由紀と華奈、柏木綾子は、また別のキャデラック。
由紀も実に冷静。
「私も光君と同じ音大に入る」
「もう少し頑張れば推薦が取れる」
「やはり光君が一番気兼ねなく話ができるのは、私」
「他の巫女さんだと、どこかしら顔を作っている」
「小学生の頃から知っていて、中学からはずっと同じクラス」
「ずっと隣の席だもの、光君も私が隣にいるのが自然」
「由香利さんとかルシェールについては、お姉さん感覚なのでは?」
と、全然気にしていない。
しかし、華奈は、そんな冷静どころではない。
「もう・・・涙しかでない・・・」
「やだ、もう、こんな生活」
「一緒に住めないし、力不足と巫女さんたちには言われるし」
「確かにそうだけどさ・・・他の巫女さんがスゴ過ぎだもの」
「美人だし、光さんの支えもしっかりできるし」
「私なんて、ほんのタマにだもの、偶然の産物程度」
「光さんが気を使ってくれる時だけがチャンス、でもゲットは程遠い」
「みんな年が近い巫女さんは音大を狙うのか・・・」
「でも私、ピアノもヴァイオリンも下手・・・どうしよう・・・」
また、柏木綾子も、少しずつ光と巫女たちの実態が皮膚感覚で理解しだした。
「うーん・・・何となく把握はしていて・・・」
「ストレートに光さんに迫ってゲットすればいいと思っていたけれど・・・」
「あれほどの巫女さんたちが全力こめて接しても、難攻不落な光さん」
「華奈ちゃんだって、そんな力不足でないもの」
「超可愛いし、性格も可愛い、わかりやすいし」
「本当に普通の現代風の女の子だよ」
「私も光さんの近くにいたいし、できればゲットしたい」
「勘が鋭いとか、センスがあるだけでは無理、実績を積まないと・・・」
由香利の太ももの上で眠り続ける光、そしてそれぞれが、いろんなことを思いながら、キャデラック3台は光の家に到着した。




