大好評の演奏の後、また不穏?
大好評と感動の中、ピアノ五重奏団「光」の演奏が終わった。
光は、共演者たちと並んで、ステージの中央に立つ。
すると、小ホールの聴衆全てが立ち上がって、大拍手となる。
それを見る春奈。
「うん、音楽の時は、光君の表情は楽しそうだ、安心できる」
ソフィーは同感ながら、少々ガッカリ気味。
「私たちに見せる笑顔と全然違うよ、それと格闘系に対した時ともね」
華奈も、また落胆。
「ほんと、光さん、ますます遠くなった感じ、雲の上の人みたい」
ルシェールは、満足気味。
「そうなると、これからはマネージャーしていいよね、スポンサーでもあるし」
「妻兼スポンサーなんて、ようやく決着がついたんだ」
そのルシェールに由香利が反論。
「いや、マネージャーにとってタレントは商品、商品に手を出してはいけないの」
「それだけは重々、申し上げます」
由紀は、闘志がわいて来た様子。
「うん、私も声楽がんばる、ここの音大に入って、光君のピアノで歌う、負けはしないよ」
柏木綾子は、口には出さないけれど、すでに音大受験を心中、決意している。
キャサリン、サラ、春麗は、この大好評の結果も、想定済み、それ以外に関心が移っている。
キャサリン
「光君に手を出しそうな妖しい輩を探す」
サラも同じ。
「そうだね、女ばかりではないね、嫉妬は男でもありえる」
春麗
「見たところは、現時点では、危険な人はいない」
「でも、危険になりそうな輩もいるかな、まだ警戒レベルではない」
さて、光は再び聴衆に頭を下げ、ピアノ五重奏団の共演者と握手をして、スンナリとステージをおりて来た。
その光を、小沢と内田、学長が笑顔で出迎える。
小沢
「素晴らしかった、即本番でもいい」
内田
「お母さんが乗り移ったかなあと思ったけれど、抜きつつあるね」
学長は光と握手。
「学費免除でも問題ない、現時点でここの音大のトップ、いや日本の演奏家でもトップクラスです」
光は恥ずかしそうな顔で、頭を下げる。
「まだまだ、あの・・・いきなりで、あまり練習もしてこなかったので」
「喜んでいただいて、うれしいです」
光らしい、「月並みな」返事になるけれど、そこまで言うのが必死。
その光に、春奈がスッと近づく。
「ねえ、光君、疲れていない?」
「お昼前に銀座で演奏してさ。ここでしょ?」
光は、首を横に振る。
「うーん・・・それほどではないかな」
「心配してくれてありがとう」
と、そこまでは普通の会話。
ソフィーがタブレットを持ち、やや厳しめの顔で学長に報告。
「テレビ局の幹部、つまり竜輝の親が、竜輝の怪我に、ものすごい立腹」
「すでにテレビ局を出て、ここの大学に向かっているそうです」
「何でも、足を滑らせるような階段が悪いとか」
その話が聞こえたのか、小ホール全体に、呆れるような嫌そうな雰囲気が発生している。




