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ピアノ五重奏団「光」が突然、復活。音大の期待が高まる。

光にヴァイオリニスト晃子から渡された楽譜は、シューベルトのピアノ五重奏曲「ます」。

光がうれしそうに楽譜を読んでいると、共演する奏者が続々とステージに登場。


すると客席の音大生が、どよめいた。

「う・・・みんなトッププロ」

「N響、読響、都フィル、新日・・・」

「マジ?みんな光君を見て、うれしそうな顔しているし・・・」

「うれしいって言うのか、目を細めている」


そんな声を聞きつけたのか、小沢が音大生たちに説明。

「集まってもらったのは、光君のお母さんの菜穂子さんと、同じ室内楽メンバーだった人たち」

「だから、実は光君のことをよく知っている」


光も、それを聞いて、何か思い出したのか、顔を赤くする。

その光の赤い顔を笑いながら、小沢が説明をする。

「そう、かの名五重奏団、その名も『光』」

「一番売れた曲が、ます」

「今でも印税が入って来る」


ただ、光は、話を聞きながら必死に楽譜を読んでいる。

「うー・・・母さんが生きている時に、二回か三回代役しただけ」

「どう弾いたっけ?いきなり急に・・・」


そんな必死に楽譜を読む光の心理など知らない音大生たちから、演奏開始をせがむ拍手が始まってしまった。

それに、ステージには共演の相手、かつての五重奏団「光」のメンバーが足でステージをドンドンと踏み、催促をしてくる。


そうなると光は、考えるのも楽譜を読むのも面倒になってしまった。

「まあ、いいや、何となく覚えているし、母さんもどこかで聞きたがっているような気がする」

と思って、そのまま目で共演者に合図、演奏を始めてしまった。


その演奏が始まった時点で、学長がにっこり。

「うん、お母さんの菜穂子さんの弾き方によく似てる・・・」

「繊細な部分と、ニュアンスの出し方、相手との合わせ方が・・・」

「でも、全てが明確、力も強い、何より相手が乗ってきている」


内田も目を細めた。

「そうですねえ、全員、すごく伸び伸びと弾いています」

「光君も前に出すぎず、相手を活かす」

「これは・・・五重奏団『光』の復活かなあ」


小沢は目が潤んでいる。

「菜穂子さんに、ようやく恩返しの一つが出来たよ」

「光君の横に立って、聞いているような気がするもの」


伝説のピアノ五重奏団「光」の復活ともいえる演奏を聴きながら、音大生は驚くばかり。

「上手い、ピアノも上手いけれど、相手の呼吸を読んで、しかもコントロールしている」

「いいなあ、あれだけ気が合えば、音楽は楽しい」

「そのまま、どこのステージでも問題ない」

「ソロもすごいけど、合わせるのもすごいや」

「本当に冗談ではなくてさ、明日からでも来て欲しい、高校の別の授業の時間がもったいない」

「そうだね、私も早く通ってもらって、あのピアノと合わせて見たい、何か道が開けるような気がする」

「でも、指揮に進むと、そこまでの時間があるのかなあ、それが不安」


来春、入学予定の光に対して、半年前から本当に期待が強くなっている。


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