音大で、光は初演奏(4)
舞台袖口から、内田先生が再びステージの中央に歩いてきて、光と晃子の隣に立った。
そして光に、声をかける。
「ねえ、光君、何かみんなに言ってあげて、すごく注目しているよ」
光は、「え?」という顔になるけれど、仕方ないと思ったようだ。
とても一言もなしに、ステージをおりられそうにもない。
光は意を決して話しはじめる。
「音大の皆さまがた、光と申します」
「来年から、ここの音楽大学の学生として、お世話になる予定です」
「その前に、皆さまの御厚意によりまして、演奏の機会を与えていただきました」
「心より感謝申し上げます」
ここまで言って、光が頭を下げると、大きな拍手。
そして光は、その顔をあげて、また話しだす。
「ここの大学に、母も学ばせていただいたということ」
「母子二代でお世話になります」
「本当にふつつかではありますが、よろしくお願いいたします」
光が再び、その顔をあげると、また大きな拍手。
光は大きな拍手を受けて、恥ずかしそうな顔になっている。
そんな光を見ていた小沢は、懐かしそう。
「そうだなあ、菜穂子さんか・・・恩返しができるなあ」
学長も、光の母を思い出したようだ。
「そうだね、あのまま生きていれば、トップの演奏家」
「菜穂子さんを応援していた私たちの想いを背負って、光君がここの音大で花開く」
音大生たちも、胸にジンと来たようだ。
「そうかあ・・・いい話だ、応援したくなる」
「話し方は謙虚だけど、そのほうが心に響く」
「ますます応援したいし、一緒に演奏したい」
「マジで超優秀で可愛い弟ができたって感じだなあ、」
「早く高校なんてやめて、こっちに通わせたいなあ」
「何より音楽をする場をたくさんに、それ以外の時間がもったいない」
さて、巫女の一団は、光と、そんな音大生の反応に一安心やら様々。
春奈は小ホール全体を見回して、
「うん、演奏前と演奏後、特にスピーチ後はガラリと変わった」
慎重で厳しいソフィーも同調。
「ホッとしたよ、スピーチでもたつくかと、でも、上手だった」
ルシェールは、光の顔を見続けている。
「お母さんを思って演奏したのかな、お母さんも光君を支えて」
華奈は、グジュグジュと泣いている。
「光さんの演奏中に、菜穂子おばさんを思い出しちゃった、逢いたくなった」
由香利も、相当ホッとした顔。
「光君に何かあったら、同じ大学だから駆けつけようと思っていたけれど、これなら大丈夫かな」
由紀は、その目に力が宿る。
「私もここの音大目指すかな、声楽で、光君の隣の席をゲットし続けたいし」
光の警護を誓うキャサリン、サラ、春麗は、慎重にホール内を見回す。
キャサリン
「ひどい危険はありません、嫉妬程度は出るかも」
サラ
「嫉妬も怖いけれど・・・まだ、光君の演奏に圧倒されている段階」
春麗
「光君の評判が高まれば、何かしてくるかな」
柏木綾子は、何かを感じたらしい、しきりに小ホールの入り口付近を、気にしている。




