音大で、光は初演奏(2)
小ホールに集まっていた音大生も、光のピアノ演奏には、言葉を失った。
そして光の演奏が終わると、全員が立ち上がって大拍手となる。
「ねえ、小沢先生と内田先生が、面白い高校生が来るって言っていたから、しかたなく来たけれど・・・マジ、別格」
「この世の音楽?私何年かかっても、あんな雰囲気作れない」
「そういえば、ヴァイオリニストの晃子さんが大のお気に入りとも聞いたなあ」
「指揮もすごいらしいよ、聴いた人は指揮科の人だったらしいけれど」
「うーん・・・馬鹿にしていたけれど、とんでもないなあ」
光の実演は、廊下で「毒のある」ヒソヒソ話をしていた音大生の気持ちを一変させてしまったようだ。
音大生の様子を見ながら、小沢がステージにのぼった。
そして光の肩をポンと叩き、学生たちに光を紹介する。
「これが、来年度入学する光君、すでに推薦入学を決定済」
小ホール全体から拍手がわきあがると、光は顔を真っ赤にして、ようやくお辞儀。
「あ・・・光と申します・・・」
「拙い演奏で・・・」
そんな光の様子を巫女たちは、様々。
春奈
「マジ、シャキッとしていない、後でお説教する」
ソフィー
「正座させて、叱る」
ルシェールは違う反応。
「個性が強い音大生たちばかり、最初は慎重にしたほうが無難なの、光君は賢いなあ」
由香利も同意見。
「その通り、最初からヒピカピカしていると、必ず妬んでつまらない意地悪をしかける、それが嫌」
由紀は冷静。
「光君のことだから、上手に対応すると思うけれど、今の態度の方がいいね、あえて敵をつくらない、ドビュッシーみたいな淡い曲にしたのも正解」
華奈は、周囲の女子音大生を見渡して、かなり不安。
「すごく性格がきつそうな女が多い、妻として心配でならない」
柏木綾子は、そんな華奈の脇をつつく。
「だったら華奈ちゃんが一生懸命に練習して、音大に入れば?」
「そうしないと、来年から、ずっと別の学校になっちゃうよ」
「でも、私も狙うかなあ」
華奈は、その言葉で、ますます焦っている。
キャサリンは、心を決めた。
「トランペットで、音大に入ります、光君を警護しなくてはならない」
サラも同じ。
「私はチェロで、警護もあるし、そろそろ本気を出して光君をゲットします」
春麗はケラケラと笑う。
「そんなの当たり前のこと、私は日本に来る前から、そのつもり」
さて、小沢は、光のピアニストとしての紹介に続き、再び学生たちに話しかける。
「この光君は、ピアニストとしては、ここの学園の卒業生にして、かの永遠に尊敬されている菜穂子さんの息子さん」
「それから、指揮者としても、素晴らしい、私は光君こそが、自分の後継者として考えている」
その言葉で、音大生たちには、再び動揺が走る。
「え・・・あの・・・伝説の神ピアニストの菜穂子さん?」
「私、すっごく憧れてる、今でも・・・その息子さんだったの?」
「菜穂子さんも超美人で、あの子もそれでメチャ可愛いのか・・・」
「それに、あの厳しい小沢先生が後継者って・・・」
ざわつく音大生たちを見ながら、光はいつもの「面倒そうな」顔に戻っている。




