奈良興福寺コンサート(3)
光とルシェールの圧倒的な「カッチーニのアヴェ・マリア」に自分自身が感動に包まれながら、圭子は演奏する巫女たちの様子を見て、笑い出した。
「実は、まだ、諦めていないかもしれない」
「華奈ちゃんは、この曲限りって思って聴いているし」
「サラも、打ちひしがれたようで、またムクムクと恋心」
「キャサリンはルシェールを認めながらも、自らの力を磨いて光君ゲット計画を練っている」
「春麗も本気を出すかな、ルシェールもおっとりだからスキがあると思っている」
「由香里さんもすごいや、いつでもルシェールに交代するよって、背中越しに巫女テレパシー」
「由紀さんは・・・光君を見ているだけ、ルシェールは意識せず、これも強い、さすが八方除の寒川様」
「諏訪様の柏木綾子ちゃんは今は様子を見ている、いつかすごいことをしそう」
ただ、その圭子の分析には、春奈とソフィーは含まれていない。
「だって、年増過ぎ」
そんな圭子の分析を感じ取ったのか、春奈とソフィーは、再び落胆で肩を落とす。
楓は、その春奈とソフィーの落胆を見て、「まあ、しょうがないよ、諦めて」と肩を叩き、二人から「ものすごい目」で睨まれている。
光とルシェールの「カッチーニのアヴェ・マリア」が、美しい余韻を見せて終わった。
再び、夥しい聴衆の大拍手と大歓声に、光とルシェールは包まれ、手をつないで頭を下げる。
「アンコール!」の大歓声の中、光はルシェールを見たことのないような真顔で見た。
「もう一曲ある」
「それが終わったら」
ルシェールは、ホロホロと涙、頷きながら合唱団の中に戻った。
「光君」
サラが光に声をかけた。
そして光が頷くと、サラがチェロを弾き始める。
ベートーヴェン第九四楽章のテーマだった。
「うわ!ここで第九?」
「まさか!幸せ!」
「すごいや!」
「あ・・・聴かないと・・・黙って!」
最初は、驚いていた聴衆も、すぐに聴き入るばかりに。
第九が進むにつれて、再び天空に異変が発生しはじめた。
満天の星空は、全てが共鳴し合うように明るさを増した。
そして昼間のように明るくなった天空に、大神殿と様々な御神霊や仏たちの呪印や神紋が浮かび上がる。
「聖母マリア、神の子イエス、天使長ミカエル、大天使ガブリエル、大天使ラファエルのキリスト教系」
「アポロ神、アルテミス神、海神ポセイドンのオリンポス神系」
「伊勢神宮、春日大社、住吉大社、橿原神宮、神田明神、寒川神社、諏訪大社他の日本の御神霊系」
「毘盧遮那仏、釈迦如来、阿弥陀如来、薬師如来、観音菩薩、地蔵菩薩他の仏教系」
「弁財天や寿老人などの七福神」
「関羽代将軍や九天弦女、媽祖女神などの道教系」
「アーサー王の聖剣エクスカリバー、草薙の剣を形どるような星の配列」
・・・・・
その他、数え切れないほどの、全地球の全ての神々や聖なる御霊が集まってきたような明るい天空になっている。




