音大到着前に一悶着
音楽大学が車窓から見え始めたところで、光は目を覚ました。
そして由香利の父にお礼。
「すみません、こんな所まで送っていただいて」
「僕の用事でしかないのに」
由香利の父は、首を横に振る。
「いやいや、大恩ある御方、これからも大切極まりない御方」
「この江戸にいる限り、いつまでもお世話させていただきます」
「いや、一生でもいいかな、なあ、由香利」
由香利がその顔を真っ赤にするけれど、光はまた別のことを考えているようだ。
「ねえ、由香利さん、今日の音大訪問は、さっきも言ったけれど僕の個人的な用事で、巫女さんたちは全く関係が無い」
「だから、先に戻ってもらったほうがいいと思う」
「小沢先生とか内田先生の用事も、どれだけかかるかわからないしさ」
「あまり待たせてもどうかと思うし」
「ここの大学に関係ない人が、あまり多く入ってもどうかなと思う」
由香利は、その意見には一応納得。
「そうねえ、私はここの大学に関係もあるしさ、問題はない」
「でも、他の巫女さんたちは、そう言われればそうかも」
「じゃあ、光君の用事が終わったら、一緒に帰ろうよ」
「まるでデートみたい」
と、少々、ご機嫌な顔。
しかし、そうはいかないのが、「警護」としての、キャサリン、サラ、春麗。
キャサリン
「いや、とんでもないことです、音楽大学とはいえ、どんな魔の手合いがいないとも限りません」
サラ
「派手な女が多いのです、色仕掛けで無理やり迫ることもあるのですから」
春麗
「私たちだって、光君の警護も兼ねて、音大に進もうと内心思っているのです、これは学園見学として、素晴らしいことではないですか」
由香利の父は、クスクスと笑い、由香利は「はぁ・・・」とため息をつくけれど、当の光は、「実に面倒」な感じ。
「しかたないなあ、じゃあ、後続車に乗っている巫女さんたちだけ帰したら?」
「こんなにたくさんで、ゾロゾロ歩くと変」
「僕だって、入学前なんだよ、おかしいって」
そんなブツクサを言い続ける光を、由香利が諭す。
「ねえ、光君、そんなことを言っても、後続車の巫女さんたちが素直に納得すると思う?」
「春奈さんは、イジイジと皮肉でしょ?」
「ソフィーは超お怒りで、政府の役目とか何とかとお叱り」
「ルシェールは光君の顔を引っぱたく」
「由紀ちゃんは、冷静だけど、そうなると超落ち込み、明日も学園で隣の席でしょ?」
「華奈ちゃんは、うわーんって、子供のように大泣き」
「綾子ちゃんは、賢いけれど、周りの巫女全員がそうなると、オロオロすると思うよ」
そこまで言われても「うーん・・・実に面倒・・・」と、いい顔をしない光に由香利の父が、助け船を出す。
「それでは、私に任せてください」
「私が小沢先生と何とか話をつけます」
驚く光に、由香利の父は笑顔。
「まあ、若手の頃からの支援者、お付き合いなんです」
「悪いようには、しません」
光は、ますます驚いている。




