光のオーラ
コンサート直前のリハーサルは、問題なく終了した。
次は、コンサート会場となる興福寺中金堂前の広場への移動になる。
光は、全ての演奏者に大きな声で語り掛けた。
「とにかく、集中して、思いっきり」
全ての演奏者も光に、笑顔。
「はい!マエストロ!」
さて、演奏者一行が、教会から一歩外に出ると、実に驚くような状態。
とにかく、群衆とも言えるような人々が、教会を囲んでいる。
そして、光が顔を見せた途端、ものすごい拍手と歓声。
「うわーーー!光君だ!」
「がんばって!期待している!」
「まさか、あの光君を目の前に見られるなんて!」
光が、少し手をあげると、また大歓声に包まれるけれど、大群衆は光たちを囲んでいるだけで、歩くことの邪魔はしない。
むしろ、教会から興福寺までの数百メートルを守っているようにも見える。
これには、政府として光を守るべき立場のソフィーも笑い出す。
「これはすごいや、無理やりの公権力の警備でなくて、全て善意の警備だもの」
「うれしいなあ、こういうの」
そのソフィーの隣を歩く圭子叔母は、一瞬、その顔を引き締めるけれど、すぐに笑顔に変わった。
「ねえ、ソフィー、すごいことになっているよ」
「東大寺の大仏さん、立ち上がっているし、あちこちの仏像が光り出している」
ソフィーも、その目を輝かせ、まず東大寺大仏殿の様子を見る。
「あらーーー・・・」
「本当だ、見える人には見える、身体を光らせて歩いて来る」
「千手観音様も?」
春奈は、また別の方向を見る。
「あれは・・・新薬師寺の薬師如来様?あら・・・」
いつの間にか、春奈の隣に、その母美智子が立っている。
「春奈、さっさと気づきなさい、西の京の薬師寺も薬師如来が立ち上がったとか」
「日光菩薩も月光菩薩も、キラキラに輝いているって」
鎌倉のニケからも連絡が入った。
「長谷の大仏さんも立ち上がったし、大船の観音様も光り出したよ」
「というか、世界各地で、マリア様とかイエス様、天使像が光り始めたとか、動き出したとか、そんなニュースにあふれている」
さて、そんな大騒ぎの中、光の身体にも、異変が起きているらしい。
後ろを歩く巫女たちが、騒ぎ出す。
「マジでピカピカに輝いている、オーラがすごい」
「普通の人には見えないけれど・・・」
「エネルギーが湧いて出ているなあ」
「ほんと、光って名前そのもの」
「光君の本気の本気が見られるのかな」
「でも、その後が心配」
少し気になったルシェールが光に尋ねた。
「ねえ、光君、大丈夫?」
「今からそれで、最後まで身体が持つ?」
「エネルギー発散し過ぎでは?」
光は、恥ずかしそうな顔。
「大丈夫、これだけ守られているんだから」
ルシェールは、ハッと驚き、そして震えた。
何しろ、光を輝かせているオーラの中に、数え切れないほどの、御神霊の姿が入り込んでいるのだから。




