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コンサート当日の朝、春日大社に集団参拝

奈良興福寺コンサート当日の朝を迎えた。

光が、ホテルの自室を出ると、廊下で巫女全員が待っている。

巫女の中から、いとこの楓が、光に声をかけた。

「ねえ、いいお天気、春日様に参拝しようよ」

光は、珍しく素直。

「そうだね、朝の散歩か、それもいいかも」

「ここで演奏する以上は、それが当たり前かな」

そんな感じで、光と巫女たちがホテルを出ると、圭子叔母、春奈の母美智子、指揮者の小沢、ヴァイオリニストの晃子、岩崎義孝、岩崎華が立っている。


圭子叔母が、光に笑顔。

「おはよう、光君、私たちも参拝したくなってね」

光が驚いていると、指揮者の小沢が続く。

「今日のコンサートに出演する市民オーケストラも合唱団も全員参拝するって話だよ」

「一の鳥居の前に集合している」


これには、光も笑顔。

「春日様に集団参拝になるんですね」

「それはお喜びになられる」


春奈が、光の隣に立った。

「じゃあ、二人で先導しましょう」

光は「うっ・・・」となるけれど、拒める雰囲気ではない。

春奈と並んで、集団参拝の先頭を歩くことになった。


春日大社の一の鳥居に到着すると、小沢氏の言葉通りに、たくさんの楽団員や合唱団が勢ぞろいしている。

そして、光たちを見るなり、大歓声と「おはようございます!」の大きな挨拶。


いつもは眠たげな声で、ボソッと言うだけの光も、これには押されたのか、珍しく明るい声で「おはようございます」を返している。


そんな光を見た圭子叔母は、うれしくて仕方がない。

「まあ、やっと子供のころの元気な光君を見たよ」

小沢氏も笑顔。

「ここまで演奏者をまとめてしまう指揮者もいないよ、これから楽しみだよ」

「みんな光君を見たくて仕方がないのかな」


光と春奈が先頭に立ち、春日大社の長い参道を歩き始めても、集団の和気あいあいとした、おしゃべりは続く。

本来は「厳粛に」とか、「気持ちを引き締めて」などとする雰囲気は、全くない。


楓が、母圭子の顔を見た。

「春日様が、相当喜んでいる証拠かな」

圭子は、しっかりと頷く。

「一の鳥居での明るくて大きな挨拶を終えて、この参道に入った時点で、全員の心のケガレを、春日様が消されたの」

「春日様も、この地で光君の演奏があること」

「それと、世界各地からの様々な御神霊が、お見えになられていることを、本当に喜んでおられる」


楓は、目を細めて光の後ろ姿を見る。

「ほんと、力強くなったよね、光君」

「去年見た時は、ひ弱のかたまり、どうなることかと」


圭子は春奈の後ろ姿を見る。

「春奈ちゃんが、まず懸命に面倒を見て、その後ルシェールとか、巫女さん全員も加わって」

「春奈ちゃんも、現世では伴侶は難しいけれど、また来世で光君の妻かな」


その言葉を巫女テレパシーで感じたのか、春奈の背中がビクンと動く。

しかし、圭子は首を横に振った。

「でも、難しい、来世でも、また争奪戦だよ、きっと」


途端に、春奈の肩が、ガクンと落ちている。

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