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大神神社にて

光たちの一行は、高松塚から戻り、昨日に引き続きオーケストラの練習となった。

少々のトラブルがあった昨日とは異なり、練習も順調に進む。

その光の指揮ぶりを見ている、練習指揮者の吉田は感心しきり。

「とにかく人を引き付ける力が、半端ではない」

「耳もいいし、間違いもすぐに把握、的確な指示を出す」

「音楽そのものが、特級品、自分とは天と地だ」


光の師匠でもある小沢も満足している。

「あまり技術的には教えることはない」

「すでに完成に近い、これからは世界各地で指揮をして経験を積む」

「すでに引き合いも多い」


さて、満足できる練習を終えた一行の翌日は、予定通り、大神神社と長谷寺の参拝。

そして、まず大神神社に到着すると、気持ちを入れ替えた楓が説明を始める。


「この大神神社は、三輪明神とも言われる、大和国一宮の神社」

「しかし、それだけではありません」

「大切なことは、この日本という国の、最古の神社であるということ」

「場所としましては、大和盆地の東南に位置する三輪山」

「高さが467m、周囲が16km、面積では350ha」

「全山が、松、杉、檜に覆われ、古来より神の鎮座される神奈備山、三諸山として、仰がれてまいりました」

「本殿は設けず、拝殿の奥にある三つ鳥居を通して、お山を配するという、原初の神祀りの様式が、今も伝えられております」


光も、楓に続いた。

「神代の昔、大己貴神つまり大国主神が、自らの和魂を三輪山に鎮められ、大物主神の御名を以て、お祀りしたのがはじまり」

「国造りの神様で、医薬、酒造り、方除等の生活全般にご利益のある神様」



指揮者の小沢氏も感嘆。

「確かに霊気あふれる、パワースポットだなあ」

「身が引き締まる感じがある」


岩崎華は、目を閉じて、その霊気を味わう。

「心の憂さが、全部払われる感じ」

「三輪様ってつぶやいただけで、心がスッと軽くなる」


ヴァイオリニストの晃子も、珍しく神妙。

「古事記にも有名な伝承があるし、万葉集にもあった」

「これは感動するよ、本当に」


春奈も説明。

「枕草子の中では、清少納言が、『やしろはすぎの御社、しるしあらむとをかし』と大神神社の神が籠る杉の霊験を書いていますし」

「源氏物語での、夕顔と光源氏の逢瀬は、互いに身分を隠しての逢瀬で、それが古事記の大物主大神と活玉依姫の恋物語とリンクしています」

「つまり、美しい乙女、活玉依姫のもとに夜になると通ってくる麗しい若者との逢瀬が、互いに身分を隠しての逢瀬」


「万葉集だと、たくさんあるけれど」

「味酒を 三輪の祝が いはふ杉 手触りし罪か 君に遇ひがたき」

「意味としては、三輪の神官が奉る神杉に触れてしまった罪のためなのでしょうか。愛しい貴方にお逢いすることが本当に難しいのです」

「杉に直接手を触れたとは、考えられなくて、神杉のごとき高貴な身分の人に対する恋なのかもしれません、とにかく相手には、神官が神杉を斎い守るような厳格な結界があって近寄りがたいのだと思います」


いろんな話が出る中、一行の顔は、一様に晴れ晴れとしている。

これも、古代からの聖地、パワースポットのご利益なのだろうか。

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