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光のプロデヴューの曲が決定

由香利の父、江戸の大親分自ら運転するキャデラックの中で、光は目を閉じて懸命に演奏する曲を考えている。


その真面目顔の光には、由香利も少し引いている。

「ふむ、マジで考え込んでいる」

「これでツンツンしたら、それは悪い」

せめて手でも握ろうかと思うけれど、少し手を出した瞬間、外国人巫女の視線と言葉が相当厳しい。


キャサリン

「その手をどこに?珍しく真面目に考えている光君の気を紛らわせないでください」

サラ

「私たちだって我慢のし通しなんです、目の前で困ります、手が動いた途端、払いのけさせてもらいます」

春麗

「いけませんねえ、光君が焦っているんですから、ますます曲が決まるのが遅くなります」


キャデラックを運転する由香利の父、江戸の大親分も由香利をたしなめる。

「大事なプロとしての初の演奏会だろ?」

「それは、余計なことを言っちゃあならねえ」


由香利は、ここまで言われては仕方がない。

出しかけた手を、スゴスゴと引っ込めることになった。



少し道を走り、光がブツブツと言い始めた。

「うーん・・・ブラームス」

「モーツァルト」

「バッハ」

「ベートーヴェン」

「ショパン・・・」

「今まで演奏してきたのは、そういうのが多いなあ」

「悪くはないし、問題はないんだけれど、今一つ気が乗らない」


そのブツブツを聞いている巫女たちも、江戸の大親分も、今回は沈黙を保つ。


また、少しして、光がブツブツ。

「そういえば・・・星とか天空の曲も・・・」

「惑星をやることだし、奈良で、あれはオーケストラか・・・」

「ベートーヴェンの月光もあるけれど、ベートーヴェン演奏したばかりで、気が乗らない」


光の顔が、少し柔らかくなった。

「そうなると・・・秋の夜の演奏会で・・・」

「お月さまで・・・」


光の声が、はっきりとしてきた。

「ドビュッシーか」

「いつか弾いてみたいと思っていたなあ」

「母さんの得意曲だけど」


そこまで言って、閉じていた光の目が、はっきりと開いた。

そして、周囲の巫女と、由香利の父に告げた。


「決めました、ドビュッシーの『月の光』に挑戦です」

「難しいけれど、心込めて、弾いたみたいと」


その光の言葉が、本当にうれしかったようだ。

巫女たちは全員がクールサイン。

由香利の父も、ほっとした顔になっている。



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