表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
277/303

奈良興福寺コンサート準備(9)

どうにもならない状況に追い込まれた練習指揮者の吉田が、コンサートマスターの谷口に、「谷口さん、まずはチューニングを」と指示。

谷口も「ああ・・・そうだな・・・」と、オーボエに目で合図、チューニングを始める。


「今日は見学」となったことから、光は少し離れた場所に立つ。

その光に圭子叔母が、近寄って来た。

「ごめんね、光君、気分悪くした?」

光は、含み笑い。

「いいよ、何となくわかった」

「圭子叔母さん、あの吉田さんと谷口さんを懲らしめて欲しかったとか?」

圭子叔母も含み笑い。

「そうなの、光君に頼むのも、どうかなと思ったけれど」

「とにかく、あの二人、大した実力もないのに、近所では名士気取りでね」

「ただ長く音楽しているだけで、上から目線」


ルシェールは、市民オーケストラの中に入っている華奈、サラ、キャサリン、春麗の顔を見ている。

「ねえ、光君、あの4人、首を傾げている」

由紀も、首を傾げた。

「しっかりチューニングも出来ていないのに、谷口さんってコンマスがチューニング止めちゃった」

ソフィーは呆れている。

「私も、奈良には関係があるから・・・あのチューニングは恥ずかしい」

由香里は光の顔を見る。

「ここで指揮をすると、大変かも」

大指揮者の小沢も難しい顔。

「少しひどいね、チューニングも出来ていないオケは・・・出来ないのかな」


光たちのそんな思いはともかく、練習指揮者の吉田が指揮台にのぼった。

早速、ホルストの惑星を振り始めるらしい。


今度は柏木綾子が首を傾げた。

「オーケストラ全体の楽器を構える姿に緊張感が無い」

「惑星の第一曲目は、火星、戦争をもたらす者」

「リズムも厳しめでないと、曲全体の緊張感が出せない」


光がポツリとつぶやいた。

「これ、聴くまでもないかな」

「もう、わかった」


小沢は、その光をなだめた。

「まあ、光君が気がついたことは、わかる」

「でも、聴こうよ」


練習指揮者吉田の指揮による、第一曲目火星が始まった。


ルシェールがため息をつく。

「出だしから崩れている」

由紀は、コンサートマスターの谷口の弓を見る。

「コンサートマスターが一番、指揮とずれている」

「遅れるし、動きは小さいし」

春奈は、途中から気がついた。

「ねえ、圭子さん、谷口さんって、あの谷口さん?」

圭子は、含み笑い。

「うん、あの元音大を気取る人、それだけで名士気取り、実は鼻つまみ者」

春奈も笑った。

「そう言えばね、私の母の美智子にも、自分は音大卒って威張って」

「だから何って、逆に叱りつけられたとか」

ソフィーは、また別の情報。

「あの練習指揮者の吉田さんは、元学生オケの指揮者だけど、楽器が下手で指揮をしただけって、母のニケが言っていた」

由香里は、途中から、その耳を押さえた。

「マジに、耳が腐る、中に入った巫女さんたちが、辛そうな顔になっている」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ