奈良興福寺コンサート準備(4)奈良町に到着
考え込んだとしても、「お土産は無いよりは、有ったほうがいい」との結論となり、結局は大量気味に購入した。
その時点で、光が渡す方法を考えた。
「なるべく楓ちゃんの目に触れない方法にする」
「つまり、奈良町に到着直前になったら、圭子叔母さんに連絡して、楓ちゃんにお使いにいってもらう」
「そのスキに、協力して家の中にお土産を運び入れる」
巫女たちは、「それしかないとか」「もう面倒だから」で、光の意見にOKを出す。
それでも、ブツブツと文句が尽きない。
「お土産程度で、どうしてこんなに苦労するのかなあ」
「4月から一緒に住むんだよね、先が思いやられる」
さて、そんな騒動もおさまり、豪華サロンバス内は、その後トラブルも何もなく順調に進み、ついに奈良町に到着した。
また、お土産を圭子叔母に渡すのも、実にスムーズだった。
圭子
「楓にはクリスマスで彼氏の斎藤君に贈るプレゼントを買いに行かせたの」
「少しお金を渡してね、せっかくだから」
「斎藤君だけには熱心だから、相当悩んでいるはず」
光と巫女たちがホッとした顔になると圭子叔母がルシェールに目配せ。
ルシェールは、光と巫女たちに説明。
「まずはホテルに、荷物を置いて」
「その後、教会に行きます、そこでお昼」
「その席で、奈良での具体的な日程を説明します」
圭子叔母からも声がかかった。
「さあ、急いで、楓が万が一、戻って来ると面倒だから」
これには、誰も反論が出来なかった。
光まで機敏にバスに乗り込み、ホテルに向かったほどだった。
さて、ホテルに荷物を預け、全員で教会まで歩き始めると、華奈が質問。
「ねえ、ルシェール、教会でのお食事って、あれ?」
ルシェールは、にっこり。
「うん、ナタリーの特製料理」
春奈は思い出した。
「へえ、懐かしい、超美味だよね、さすがナタリー」
しかし、少々の苦い思い出もある。
「光君は、私の料理より、美味しそうに食べた」
「何がいけないのかと、しばらく悩んだ」
「まあ、料理はナタリーとルシェールには負けるなあ」
その一行が教会に着き、ドアを開けた時点で、食堂から食欲をそそる香りが漂ってくる。
そして、食堂に入り、テーブルに着くと、どんどん食事が運ばれてくる。
「トリュフをふんだんに使った、トロトロオムレツ」
「ラタトゥイユ」
「リエージュ風のブレ、つまり肉団子」
「子羊のステーキ」
・・・・・
とにかく美味な料理が大量に運び込まれ、光も巫女たちも、美味しくて仕方がない状態。
「美味しいなんて、その程を越えている」
「質実剛健、ドッシリ系の美味しさ」
「あの光君でさえ、しっかり食べるもの」
「でもさ、楓ちゃんには、このボリュームは危険かも」
「内緒だよね、これ知ったら泣いて怒る」
光と巫女たちは、美味しい料理を食べながら、結局「楓に対する不安」が、頭から離れることはない。




