室内楽団「光」の復活と、またさらに新室内楽団結成?
楓は、コンサートの翌日午前に、奈良に帰った。
いつものごとく、駅で見送る光に抱きついて泣いた。
「帰りたくないよーーー」
「ここにいたいよ」
「あんな鬼母の待つ家は嫌」
「私だけ奈良は嫌」
さんざん泣いたけれど、さすがに他人の目もある。
相当、しょんぼりして、「じゃあ、また来てね、奈良で待ってる」とだけつぶやき、改札を通っても何度も振り返り、ようやく姿を消した。
光と一緒に見送った巫女たちも、さすがに楓が可哀想になったらしい。
「まあ、しかたないけどね、うーん・・・」
「奈良で、またダイエットさせられるのかな」
「一人だけ奈良というのも、辛いと思うよ」
「でもさ、来年はこっちに来るんでしょ?」
「うん、斎藤さんと同じ大学を目指して、相当頑張って」
「時々文句を大爆発させるのも、寂しさのため」
巫女たちは、いろいろ話しているけれど、光は途中からスマホで誰かと話をしている。
「ああ、そうですか、わかりました」
「うーん・・・午後でよかったら伺います」
「え?僕の家で?」
「うーん・・・わかりました」
「それでは自宅におります」
電話を終えた光が、自宅に戻るべく歩き出すと、ルシェールが声をかけた。
「ねえ、光君、用事ができたの?」
光は、頷いた。
「母さんが生きていた頃、室内楽を一緒にやっていた人たちが、アンサンブルをしないかって」
「音大でやるのかなあと思ったら、僕の家でって話」
「特に断る理由も無いし」
「小沢先生とか、内田先生も来るみたい」
その話を聞いていた巫女たちは、様々。
春奈
「伝説の室内楽団光の本格的な復活だね」
ソフィー
「これは聞き逃せない、同居の強み」
由香里
「ワクワクして来た、動画で残したい」
由紀
「私、その室内楽団をバックに、歌ってみたい」
キャサリン
「トランペットの入る室内楽を探そう」
サラ
「私はチェロだから、プロの先生の技術が勉強になる」
春麗
「モーツァルトのフルート四重奏曲ってあったなあ、やってくれないかなあ」
華奈は下を向く。
「私、まだ下手だから、聴くだけかな」
その華奈を柏木綾子が慰める。
「聴くことも勉強だよ、レッスンもしてもらったら?」
すると華奈は、いきなり元気になった。
「そうだよね、魔女の晃子さんより、いいかな」
ルシェールが話をまとめた。
「ほとんど、みんな音大志望だから、いずれは室内楽団を作らない?」
「もちろん、たくさん練習して、上手にならないといけないけれど」
「そうすれば、ずっと一緒にいられる」
その提案に巫女全員が元気よく「賛成!」の声をあげるけれど、光は微妙な顔。
「これは、相当ビシバシ鍛えないと・・・それで後で文句を言われる」
「あーーー!超面倒・・・」
大コンサートが終わり、また面倒くさがり屋の光も、復活している。




