大隕石の消滅 聖母マリアの出現
光の指揮棒が天を刺すように高々と掲げられたと同じ時刻、NASAをはじめとした全世界の宇宙観測機関は、大隕石の完全消滅を確認。そしてその事実の発表に至った。
「全世界を恐怖に包んだ大隕石は、全く何も痕跡を残さず、消滅した」
「以前と変わらない大宇宙が復活した」
「極めて不思議ではあるけれど、日本の東京、日比谷の野外音楽堂で高校生が指揮棒を天に向かって突き上げた時刻と同時だった」
その発表と同時に、ローマ教皇は祝福の祈りのメッセージ。
「我らが愛する地球を守っていただいた偉大なる神に感謝を」
また、ローマ教皇だけではない、世界各地の宗教者も同様のメッセージを発し、信者たちも、そのメッセージに合わせ、鏡の前で感謝の祈りを捧げている。
その全世界の鏡に、再び、光が映った。
ものすごい拍手、アンコールの声、地鳴りのような足踏みの音の中、ステージ裏から、ステージ中央に歩いて来る。
そして、いつの間にか、ステージ中央にはピアノ。
光は、聴衆にお辞儀をして、ピアノを弾き始める。
「バッハ=グノーのアヴェ・マリア」だった。
柔らかくゆったりとした光のピアノに、オーケストラ、合唱がふんわりと重なっていく。
「これこそ・・・癒しの歌・・・」
「うん・・・泣ける」
「身体の緊張が解きほぐされて・・・心地よい」
・・・・・
聴衆の中には、一緒に歌う人まで現れ、またその人につられて、光のピアノに合わせて、全員が歌いだす。
全世界の鏡においても、それは同じだった。
全ての人が指を組み、鏡を見上げて、アヴェ・マリアを歌う。
異変が起こった。
全世界の鏡の上に、白い長衣を着た女性が出現。
そして、歌い続ける人々を笑顔で、抱きかかえるような動き。
「聖母マリア様?もしかして?」
「あーーー!きれい・・・・」
「はぁ・・・救われた・・・」
「こんなことが・・・」
「曲が終わって欲しくない」
「ずっと見ていたい・・・」
「ありがとう・・・マリア様・・・」
出現した聖母マリアは、輝くような笑顔。
その腕を歌い続ける全員に伸ばす。
「なんか・・・幸せ・・・」
「怖くない、うれしい」
「あたたかくて、大きくて、柔らかな腕に包まれるような」
「マリア様は、私たちを抱いてくれる」
世界中の人々が、感激に包まれる中、アヴェ・マリアの演奏が終わった。
光、音楽部、合唱部全員は、再び万雷の拍手に包まれている。




