復活交響曲は、大クライマックスに
日比谷野外音楽堂及び、全世界各地に設置された鏡に映る、復活交響曲の演奏を聴く全ての人が、手を合わせる、あるいは手を組み合わせている。
そして、一心に指揮棒を振る光を、その指揮に応える楽団を見る。
大指揮者小沢は、周囲の聴衆を見ながら感じた。
「光君は、この日比谷の音楽堂を、人々が祈る荘厳な大神殿に変えてしまった」
「そして、その大神殿から、一本の光線が、天空に伸びる」
「まるで、大宇宙の神に何かを伝えるかのように」
国連本部は、コンサートの生中継動画の閲覧数を見て、驚いた。
「30億を超えている・・・パソコンなど持たない貧困国を考えれば・・・」
「ほぼ、地球上の全ての人が見ている」
「あの少年と、オーケストラの演奏に魅入られている」
復活交響曲は、全世界を魅了したまま、ついに最終楽章に入った。
この交響曲の白眉とも言える大合唱になった時点で、天を見上げる人が多くなった。
涙が流れるまま、手を合わせ、あるいは手を組み、天を見上げる。
光の指揮と、紡ぎ出される音楽は、さらに壮麗さと力強さを増した。
そして、それに応じて、全世界の鏡も、その輝きを増し、そこから天空に伸びる光線も輝きを増す。
NASAや世界の観測機関は、驚きに包まれている。
「すでに、大隕石は・・・消え去りつつある」
「全て、極小に粉砕されて・・・あれなら地球に全く害が出ない」
「それにしても、普通の光線ではないのか?」
「とても、光速の速度ではない」
「科学を越えた・・・これは神の光線なのか・・・」
復活交響曲は、ついにクライマックスに入った。
光は、思いっきり足を踏ん張り、胸を張り、指揮棒を振り続ける。
足を踏ん張り、胸を張るのは、光だけではなかった。
日比谷野外音楽堂に集まった全ての聴衆、全世界に設置された鏡の前で見ている人々、ネット動画で見ている人々の全てが、同じように足を踏んばり、胸を張る。
そして、全ての聴衆が感じた。
「うわ!眩しい!」
「コンサートホールは、ただの大神殿だけでない!」
「光り輝く黄金の大神殿に見える」
「なんと激しく強く、心地よい音か!」
「足を踏ん張っていないと倒れる、倒れたくない」
復活交響曲の最後は、力強く、荘厳極まりない、大クライマックスとなった。
光は、指揮棒を天を刺すように高々と掲げ、指揮棒を止めた。
そして、光はしばらく、そのままの姿勢で動けない。
しかし、聴衆は、光が動き出すのを待てなかった。
「ウォーーーーー!アーーーー!」
「すごいーーー!よかったーーー!」
光がステージに登場して来た時以上の、大拍手と地鳴りのような足踏みが、鳴り響く。
光の指揮棒が、ようやく下におりた。
そして、少し身体をふらつかせながら、聴衆に振り返る。
すると、聴衆全員が総立ち、大拍手が光を包み込む。
光は、本当にうれしそうな顔。
「ありがとうございました!」
きれいなテノールが、会場全体に響き渡っている。




