バスに乗り、日比谷のコンサート会場に向かう。
全員がシュークリームとエクレアを食べ終わり、少しくつろいでいると、チャイムが鳴った。
インタフォンから、「岩崎です」との声が聞こえて来た。
光はソファから立ち上がった。
「岩崎様、ありがとうございます、では出発します」
巫女たちもソファから立ち上がり、全員が玄関を出ると、家の前にバスが停車している。
光は頭を下げる。
「本当に、バスまで手配していただいて」
岩崎義孝は、うれしそうな顔。
「さあ、早く乗ってください」
「私は、光様のお役に立てるのが、実にうれしいのです」
車窓からは、孫娘の岩崎華も顔を見せている。
全員が乗り込むと、バスは静かに走り出す。
岩崎義孝は神妙な顔になった。
「ついにこの日が来ましたね」
「少し興奮しています」
光は、柔らかな顔。
「いえ、全て上手に進みました」
「岩崎様をはじめとして、世界の人の協力で」
岩崎義孝
「心配された大地震も火山の大噴火も起きることなく」
光
「そこまでの重力変化が発生する前に破壊すればいいだけのこと」
「ただ、それまでに全世界の協力がなければ、それも叶いません」
岩崎義孝
「少々の反対活動もありましたが、それも最小限に」
光
「何をやっても反対者は出ます」
「ただの幼稚な反対も多い、子供の我がままみたいなもの」
バスは首都高に入った。
そのバスの前後左右を、公安の車両がしっかりと警護する。
ソフィーが厳しい顔。
「今、光君の身体に何かあれば、地球は壊滅するの」
「だから、何があっても、守らないと」
由香里が、ソフィーの肩をポンと叩く。
「公安の車を囲んで、親父の組の車が走っているよ」
「怖くて誰も手を出せない」
楓は、バスの中から、恋人の柔道選手斎藤に連絡。
「もう着いた?」
斎藤からもすぐに返信。
「うん、日比谷にいる」
楓は、声が少し揺れる。
「斎藤さん、光君を護って、お願い」
斎藤はやさしい声。
「ああ、任せて、俺の学園の柔道部も、バスが公園に着いたら、全員で光君を警護する」
「坂口先生も本気だ」
「何より可愛い後輩の大ステージだよ、命掛けても護る」
光の隣には、由紀が座っている。
「だって、このほうが落ち着くもの」
光は、その由紀の手を握る。
「そうだね、由紀さんが隣にいると落ち着く、実に楽になる」
「ずっと昔からクラスメートだったからかな」
完全に先を越された他の巫女たちは、「やはり由紀さん、恐るべし」と、その顔を見合わせている。




