コンサートを前にした世界情勢
NASAを筆頭に、各国の宇宙観測機関は迫り来る超巨大な隕石の進路の注視に余念がない。
「確かに地球に確実に近づいて来ている」
「ただし、現時点で、地球に重力変化をもたらす程度の距離ではない」
「それを考えれば、例の光線で現時点で細かく粉砕するのがベスト」
また、世界中の優秀な科学者たちが、あらためて光線を発する鏡を分析。
「実に不思議な構造の鏡」
「声の振動がパワーとなって鏡の中央に蓄積される構造」
「それが一定の条件で宇宙に伸びる光線と化す」
「鏡の全面反射は眩しいけれど、そうせずに一点に集約して光線と化す」
「鏡が増えれば増えるほど、声や音の振動が増えれば増えるほど、蓄積されるパワーが増えるのは、当然か」
「誰が、こんな構造を考えたのか」
「一定の条件が、今一つ読めない」
「おそらく、何かの声か音が、その条件なのかもしれない」
また、大隕石爆破計画が発表された当時は、懐疑的だったマスコミも、今は全く批判報道は行っていない。
「核攻撃がしにくい以上は、政府や宗教家、科学者の判断を信用するしかない」
「ここで私たちがいがみあって、反対運動をしても、それは反対運動だけ」
「何ら対案がないのだから、例の野党議員たちのように、余計な混乱を起こすのも無意味」
そんなマスコミ報道を気にしたのか、野党党首自らが全国民に謝罪会見をするまでになっている。
さて、そのような情勢の中、国連や各国政府、全ての宗教指導者から、一斉に声明が発表された。
「明日、日本時間の11月23日午後7時、時差がある地域では、それぞれの時刻に、直近の鏡設置場所にて、お祈りを要請する」
「あくまでも地球の存続のため」
「この愛する地球を守るため、ご賛同いただける方は、全員鏡の前にて、お祈りの声を要請したい」
その要請を受けて、世界中のマスコミが、また騒ぎ始めた。
「国連のホームページに、日本の高校生のオーケストラのコンサートが異例にも告知されている」
「そのコンサートの開演時刻が、日本時間の11月23日の午後7時」
「となると、何らかのリンクが考えられる」
「しかし、あくまでも高校生の演奏会だ、どこに害がある?そもそも力もないだろう」
「マーラーの復活・・・それを高校生が?しかも指揮者も高校生?」
「意味不明であるが・・・」
「国連やバチカンも後援しているとは」
「ただ、もう疑問を呈している時間はない、何しろ明日だ」
また、不思議な動きが起こった。
世界各地に設置された鏡の前に、楽器を持った音楽奏者が集まり始めた。
また、その音楽奏者の横には、発声練習をする声楽家も集まって来ている。
それにはマスコミもインタビューをすると、彼らが答えた。
「何となく一緒に演奏したいなあと」
「その音や歌声が光線のパワーになればいいかなと」
「インタネットで世界的大指揮者の小沢先生が、コメントを出していて」
「例の日本の高校生指揮者の光君って、小沢先生の愛弟子で、一番将来を嘱望しているらしくて、彼の指揮もネットで流すみたいなんだ」
「スマホで見られるようにしてくれるみたいでね」
「ああ、楽しみさ、ワクワクして来る」
コンサート前日にして、世界は様々に期待感が高まっているようだ。




