コンサート前日の夜
アポなし国会議員たちを退治した後は、光の学園のコンサートに対して何も妨害行為はないまま、時間が経過し、とうとうコンサート本番の前日になった。
難曲であるマーラーの復活交響曲の仕上がりも、ほぼ完璧、指導に来る大指揮者の小沢氏、ウィーン歌劇場の元指導者、音大関係者からも抜群の評価を獲得している。
また、世界各地の政府庁舎、宗教施設、学園や病院、企業の屋根にまで設置された鏡に祈る人々も膨大な数。
かつては、強硬に反対していた人たちまで、今では最前列に立って、祈っている。
さて、夕食の後、「少し考えごとがある」と言い、光は自分の部屋に入り、しきりに何かを考えている。
その光の様子に巫女たちは様々思う。
春奈
「お腹一杯で眠いのを誤魔化しているだけでは?」
ソフィー
「そういう憎まれ口を言うから、光君に追い出されるの、自業自得」
ルシェール
「光君が、一人で考えるのは、たいてい音楽のことと思うよ」
由香里
「同感、何かまだ演奏に物足りない部分を感じているのかな」
お姉さま巫女たちは、そんな状態。
ただ、光と一緒にコンサートに出る由紀が、気がついたらしい。
「おそらく、アンコールだと思う」
「全世界で盛り上がるコンサートになりそうだけど」
華奈も珍しく気がついた。
「ああ、復活が難曲過ぎて、楽団に余裕がないので、アンコールはしないって話だったっけ」
「でも、ないと寂しいかなあ」
柏木綾子
「でも、練習していないし、いくら何でも明日の夜に本番、間に合わない」
キャサリン
「初見でできるのは、私と由紀ちゃんとサラ、春麗くらい」
サラ
「華奈ちゃんは・・・うーん・・・」
春麗は、落胆する華奈をなだめる。
「まあ、仕方ない、その分だけ、復活を頑張って」
珍しく黙って聞いていた楓がようやく発言。
「一番簡単なのは、光君がピアノを弾いて、歌うこと」
「歌も上手だよ、マジに」
「ナマケモノだから、滅多に歌わないけど」
そんな話をしていると、光が自分の部屋から出て来た。
そして、ピアノの前に座る。
弾きだしたのは、様々なアヴェ・マリア。
バッハ=グノー、モーツァルト、シューベルト、カッチーニ、ケルビーニ、アルカデルト・・・様々、弾いてはまた考え込む。
その考え込む光に、すっと由紀が近づく。
「ねえ、光君、アヴェ・マリアにするの?」
光は素直に頷く。
「マリア様にお礼をしないとね、本当に協力してくれて」
由紀は光の顔を見た。
「どうせなら、ここにいる人も歌えるような曲にして」
「コーラスにしようよ、もちろん光君も入って」
光は、うれしそうな顔。
「じゃあ、バッハ=グノーかモーツァルト、シューベルト、カッチーニから選ぼうよ」
結局、コンサート前日の夜は、光と巫女のアヴェ・マリア合唱パーティーになってしまった。
その歌い疲れもあったのか、全員が本番前の緊張感を感じることもなく、熟睡となった。




