VSアポなし国会議員(4)
公安庁の車に乗せられた国会議員たちには、さらなるショックが待ち受けていた。
所属政党の幹部から、首を絞めてまで責めた少年について、知らされたのである。
「え・・・彼が・・・あの光君?」
「数々の恐ろしい事件やテロを解決した光君なの?」
「うわ!知らなかった!」
「ただ、政府から特別視されている少年としか・・・」
「やばいよ、これ・・・」
「辻村議員がどうしてもって言うから・・・」
「だって、支持率が落ちているから、仕方ないと思って・・・」
「そんなこと言って逆に支持率落としてるじゃない・・・」
「大西議員が光君の首を絞めたりするから!」
「いや・・・あれは国のため、国民を守るため・・・」
「光君は、その功労者でしょ?」
結局、国会議員同士で内輪揉めとなる中、その政党幹部から連絡があった。
「アメリカ政府、中国政府、ギリシャ政府から、厳重な抗議があって、苦慮している」
「既にマスコミ報道もなされている」
公安庁の車のモニターでは、アメリカ、中国、ギリシャの三人の大使が並んで、会見を開き、抗議声明を発表している様子が映っている。
「そもそも本人の了解を得ずに、勝手に映像を撮るなど、完全に人権無視」
「実に野蛮な行為もあり、とても日本国民を代表する国会議員とは思えない」
「世界中が期待しているコンサートを台無しにしようなど、全く理解できない」
政党幹部の声が冷たいものに変わった。
「今後、我が党とは縁を切って欲しい」
「その後は、全員の議員辞職を要求する」
それでも、辻村議員が抵抗した。
「いや・・・あくまでも、党のため・・・・」
その抵抗を受けて、政党幹部の声に怒りが満ちた。
「党の前に、日本だ!世界だ!地球だ!」
「もう、あんたたちとは話をしたくない!顔も見たくない!」
政党幹部との連絡は、そこで途絶えた。
アポなし国会議員たちは、身体を震わせて落胆するのみの状態になっている。
さて、光は、公安庁の車が去った後、集まっていた群衆に頭を下げた。
「お騒がせして申し訳ありません」
「僕は大丈夫です」
その光に、たくさんの声が寄せられる。
「よく我慢した!」
「あんなアホな国会議員なんて気にするな!」
「コンサート応援する!頑張って、光君!」
江戸の大親分が、群衆を笑顔で制した。
「さあ、光君たちは、授業も練習もある」
「拍手で、送りましょう!」
その声に、また大きな拍手が光たちに浴びせられる。
顔を赤くして、光は群衆に一礼。
ようやく校門を通って、学園内に歩き出す。
春奈が光の脇を軽くつついた。
「ねえ、拍手までされて、授業中に居眠りしないでね」
しかし、光はポカンとして、何も聞いていない。




