VSアポなし国会議員(1)
「先生方、何の御用なのでしょうか」
「少なくとも生徒本人の了承も得ずに、勝手に映像を撮るのは、何の理由があるのですか?」
春奈は、聞いたこともないような厳しい口調。
校門前に集まっていた数人の国会議員と、テレビ局の腕章をつけたカメラマンに問いただす。
その春奈に応えたのは、中年のスーツを着た女性議員。
とにかく喧嘩腰の政府追及を得意として、有名な人。
「何を勘違いしたことを言っているの?」
「私たちは、国権の最高機関の立法府、国会議員なの!」
「その私たちに対して、その言い方は何ですか?」
「あなたは、ここの学園の教師なの?」
「少しは、物の言い方をわきまえなさい」
「私たちの用向き?」
「私たちが、ここに立っていて何の問題があるの?」
「問題があるのなら、それを、しっかり述べなさい」
「私たちには、国政調査権があるんです」
「お宅の生徒の撮影も、国政調査の一環です」
とにかく、女性議員の言葉は喧嘩腰、その高い声が、校門周辺に響き渡る。
その女性議員に続いて、少し若めの男性議員が、春奈を責め始めた。
「貴方は、少なくとも、私たちを国会議員と知っていて、厳しい口調で私たちに問いかけた」
「これは、国権の最高機関である立法府に対する愚弄と恐喝である」
「全く敬意のカケラもない」
「もっと言えば、反国家思想の持主なのか」
「そんな、不見識極まる教師を、ここの学園は採用しているのか」
「実に問題である、国会質問で取り上げる」
「いや、不健全高校追及プロジェクトを立ち上げて、市民と連携し、連日の校門前でのデモも辞さない」
ソフィーは、国会議員の発言の酷さに呆れた。
「春奈さんは、学園教師として、当然の対応、厳しくもなんともない」
「でも、国会議員たちの、驕り高ぶりが酷い」
「不逮捕特権をカサに着て、何でも出来ると思っている」
「ただ、これは、国際問題にもなるよ」
ソフィーは、キャサリン、サラ、春麗に目配せ、国会議員たちの前に進み出た。
「公安庁のソフィーと申します」
国会議員たちも、凄腕のソフィーの名前は知っているらしい。
一瞬はひるむ。
しかし、すぐに反発を開始する。
「何だ?そこの官僚!」
「何の用?私たちは一般人ではないの」
「まさか、官僚の身分で、国会議員に意見するのか?」
ソフィーは、首を横に振る。
「いえ、先生方、それは申しておりません」
「むしろ、先生方を心配してのことです」
「今、先生方のお連れのテレビ局さんですか、撮影された中に」
「アメリカ政府、ギリシャ政府、中国政府から保護を要請されている女子学生が3人います」
「もちろん、勝手な撮影などは許されてはおりません」
「それでも、撮影をされるとならば、外交問題にもなりますし」
「もちろん、先生方の言動も含めて、彼女たちの本国政府にも連絡をすることになりますし、マスコミにもリークされるでしょう」
「もし、それで、国内的にも、国際的にも大きな批判を浴びることになったら、どういう責任を?」
最初は居丈高だった国会議員たちの表情が、蒼ざめたものに変わっている。




