光は柏木綾子に諏訪大社と八ヶ岳案内を頼む
再び、畳にゴロンしてしまった光の耳に巫女たちのざわつきの声が聞こえてきた。
まずは華奈がいつもの文句。
「もーーー!このナマケモノの光さん!いつまで寝ているの?妻に恥をかかせないでよ!」
ルシェールは、やや冷静。
「演奏して疲れちゃったの?人も多かったしね、今度は一緒に入ろう、光君、口先だけの妻の華奈ちゃんなんんて、どうでもいいから」
由紀も冷静、部屋を見回して光に尋ねる。
「誰かの気配が残っているけれど?悪い気配ではないけれど」
由香利もそれは感じていたらしい、気配の主体も気づいたらしい。
「もしかして、八部衆のカルラ様?そんな感じ」
そこまで話されて、光はようやく身体を畳から起こした。
春奈やソフィーも何かを言いたそうだったけれど、起き上がった光の顔は、柏木綾子に向いている。
「ねえ、柏木さん、少し頼みたいことがある」
柏木綾子は、頬を赤らめて、光の顔を見る。
「はい、なんなりと、光さんのお願いなら、なんとしてもお答えいたします」
光は、真面目な顔。
「諏訪大社と八ヶ岳に行く用事ができたの」
「できれば、案内をお願いしたい」
柏木綾子の顔が、パッと明るくなった。
「了解しました、我が諏訪一族、心を込めておもてなしをさせていただきます」
そして、光に深々と頭を下げる。
キャサリンの顔が、いつにもましてキリッとなった。
「ということは、光君、例の対策の第一なのですね」
サラも、湯上りフェイスを引き締める。
「ふむ、それゆえ、天空に浮かぶ鳥神カルラが来られたのか」
春麗もキュッとその愛くるしい顔を引き締める。
「とにかく星座の動きの観察ですね、それから危機の時期を探る、少しでも計算違いをすると、地球そのものが危険」
ずっと黙っていたソフィーが口を開いた。
そして光に確認。
「そうなると気象庁の担当者も必要かな」
「天文学者も?」
光は、少し考えて答えた。
「まずは、気象庁だけ、天文学者は後で考える」
「詳細な事実確認が主流なの、今回は」
「天文学者は諸説というか自説を振り回して、混乱の原因になる」
その光の言葉に春奈が素直に頷く。
「栄養学の世界でもそうかな、様々な食事健康法があふれて、互いに自説を譲らない、みんなバックに業者がついているからかな」
最初に文句を言っただけで、難しい話に全くついていけなかった華奈が、恐る恐る光に質問をする。
「ねえ、光さん、八ヶ岳って、牛乳とかチーズとか有名だよね」
余りにも飛躍した華奈の質問に、他の巫女たちは呆れるけれど、光が少し笑う。
「うん、華奈ちゃん、美味しいと思うよ、牛乳飲みたいもの」
「行ったら一緒に飲もうよ」
光の思いがけない反応に華奈はガッツポーズ。
他の巫女たちは、実に悔しそうな顔になっている。




