野党が反対活動を開始
復活交響曲の演奏会の一週間前の日曜日になった。
懸命の練習が続けられたため、仕上がりも順調、指導に来る先生方からも、
「とても高校生のオーケストラと合唱とは思えない」
「プロのオーケストラよりも、音がピュアで心に響く」
「練習を聴きながら、指導をしながら、私たちも力をもらっている」
など、評価が高い。
また、世界各所に設置された鏡に集まる人も、膨大な数となり、「鏡を見掛けたばかりでも祈る」、そんな人も多くなっている。
しかし、各国政府や宗教家、科学者から説明、要請をされても、なかなか納得しない人々もある。
そして日本国内でも、野党の議員が、反対行動を始めた。
「地球壊滅は、避けられない運命」
「それを政府や宗教家、御用科学者が無意味なことを、国民に要請し、政権強化と、宗教家や科学者は自らの地位保全を意図しているだけだ」
「たかが高校生のオーケストラに、日本政府が協力するのは、異常」
「その悪辣な日本政府に国連も宗教家も科学者さえ騙された」
「国費を賄賂に使ったのか?」
「使っていないと強弁するなら、その証拠を文書にして示せ」
「各地の宗教施設の空に、マリア像が浮かぶとか、あれは、どんな映像設備を使ったのか」
「仮にも国費が使われているのなら、国家の宗教に対する援助となる、憲法違反も甚だしい、即刻退陣、総選挙を実施するべきだ」
「宗教施設前での食料の無料配布も問題だ、しっかりと衛生面のチェックはなされているのか」
「食中毒の情報がないけれど、政府はお得意の隠蔽工作をしているのか」
「それも宗教団体からの政治献金のためか?賄賂ではないのか?」
・・・・など、ありとあらゆる抗議を行い、国会前や各宗教施設で、プラカードを持って、反対運動を決行しようとマスコミやSNSを使って、呼びかけ始めたのである。
ただ、そんな野党の思惑は、なかなか実らない。
まず、いつもの反対運動のように、組織から人が集まって来ない。
「組織単位で、いつもは100人は来るのに、2人か3人程度だ」
「その集まった連中も、顔を見せるだけ、いつの間にかいなくなってしまう」
「これでは、全組織を動員しても、200人にも満たない」
「いや、途中で姿を消すのだから、100人に届くか届かないか」
「そうなると、我々国会議員も歩くのか?」
「寒い日は嫌だ、風や雨の日も嫌だ」
「やっと国会議員になったのに解放してくれ、そんな行列から」
野党の幹部は嘆くけれど、このままではいられない。
馴染みのテレビ局に声をかけ、更なる反対運動を始めることにした。
月曜日の朝、光たちがいつものように学園に登校、校門を通り抜けようとすると、数人のスーツを着た大人が立って、光を見ている。
ソフィーが苦々しい顔。
「あの人たち、野党の国会議員」
「得意のアポなし訪問」
「光君、気をつけて」
光も嫌そうな顔。
「大の大人が、しかも国会議員がアポなし訪問?」
「それに、朝から睨みつけて来る」
「表情からして、喧嘩腰」
「テレビカメラをこっちに向けているし」
「自分たちは勝手にここに来て」
「映像を取られる僕とか学生には、拒否する権利もないの?」
「国会議員なら、何をしてもいいの?」
春奈が、光の怒りを察した。
そして厳しい顔で国会議員の一団に向かって歩いて行く。




