ローマ教皇からの手紙 父からの届け物
ローマ教皇からの手紙は、ソフィーが翻訳した。
内容としては、コンサートの成功を期待すること、それから、一度、光と全ての巫女をバチカンにお招きしたく、出来れば演奏をお願いしたいとのこと。
春奈が、珍しくうれしそうに、光にスリスリ。
「ねえ、光君、私も一緒だよね」
「学園の教師として、責任を持って、引率します」
「隣の席で、光君のケアもするかなあ」
光は、その春奈に冷たい。
「行くんだったら4月にするかな」
「大学生になってからのほうが、時間に余裕があるし」
「だから、春奈さんは同じ学園の先生じゃない」
ルシェールが春奈を、たしなめる。
「ほら!春奈さんは、いつも皮肉ばかりを言うから、こういう時に光君に仕返しされるの」
「大人しくお留守番してもらってもいいかな」
シュンとなる春奈に、光が慌てて声をかけた。
「飛行機酔いするかもしれないから、隣は頼むかな」
途端に春奈は元気になっている。
さて、光は、それでもローマ教皇からの手紙が気になったようだ。
ソフィーから手紙を受け取り、自分でも目を通す。
「行くのはいいんだけど」
「どうせなら、ヨーロッパ観光でもするかな」
「その前に、演奏か・・・断りづらい」
そこまでは、ソフィーが読み取った内容からは、理解がしやすいものだった。
光の目が何かを捉えたらしい。
その手紙を、窓からの光線に向けると、不思議な暗号が浮かび上がる。
手紙を持つ光に、ルシェール、ソフィー、サラが走り寄った。
ルシェール
「これは・・・アラム語?」
ソフィー
「イエスが使っていた言葉」
「だからイエスは悪霊払いに、この言葉を使った」
サラ
「もう、このアラム語を使う人は、極めて少数、シリアに残るだけ」
巫女全員が、注目する中、光はおもむろに口を開いた。
「バチカンの地下深くの秘密書庫に保管されていたアラム語の呪文だよ」
「その名前は、滅びの日の解除」
「全世界の破滅を無効化する呪文」
由香里が、光に尋ねた。
「それで・・・光君・・・その呪文をどうするの?」
「私たちは、アラム語は・・・難しいし」
「もちろん、世界の人にも難しいのでは」
同じ思いで光を見る巫女たちに、光は笑って首を横に振る。
「それについては手配済み」
「もうすぐ来るかな」
その光の意味不明な言葉の直後だった。
玄関のチャイムがなり、インタフォンから「宅急便です」との声。
光が玄関に出ていくと、華奈も当然のように、出ていく。
「玄関に出る時だけ早い、後はイマイチの華奈ちゃん」と巫女たちが噂をしていると、華奈の懐かしい大声三連発が聞こえて来た。
「えーーー?北海道から?」
「あ!光さんのお父さまから?」
「私、妻だから開けてもいいよね!」
リビングで待つ巫女全員が、ムッとした顔になっている。




