各宗教施設の前では炊き出し イタリア語の手紙
赤坂の大聖堂の奇跡以降、各宗教施設の前では、無料飲食コーナーが設けられた。
おにぎりやパン、スープや豚汁、甘酒などが多い。
また、全て材料費は宗教施設から、サービスする人も自主的に参加している。
ルシェールは、そんな情報を聞いて、うれしそうな顔。
「マリア様がおっしゃったんだけど」
「満腹になって、怒る人は、ほとんどいませんとか」
「せっかく拝んでくれるんだから、美味しいものを食べてもらいたいって」
「なかなか、豪華なものは出せないけれどとか」
すると光が、余計なことを言う。
「春奈さんと、ソフィーが怒ってばかりなのは、お腹が減っていたの?」
「楓ちゃんは、食いしん坊だからわかるけれど」
春奈は、思いっきり光の頭をコツン。
「光君のその無神経さに腹が立つの」
ソフィーは光のお尻を蹴飛ばした。
「光君に無視されるからストレス食いなの、全て光君が悪いの」
楓にいたっては、光の両頬を思い切り引っ張る。
「あのさ、私は乙女なの、会うたびに食いしん坊って、ひどくない?」
「そんな他人のことを言う前に、自分がしっかり食べれば?」
「マジで食べるのが遅くて、イライラする」
結局、叱られてションボリとなる光ではあるけれど、音楽部の指揮者としては、超順調。
難曲であるマーラーの復活交響曲も、音大や小沢先生、ウィーン歌劇場の元指導者の協力を得て、十二分に聴かせられる状態に仕上がっている。
さて、コンサートの一週間前、光のもとに、一通の手紙が届いた。
光が差出人を見るけれど、さっぱり読めないらしい。
「イタリア語っぽい」
「英語も苦手なのに、イタリア語なんて無理」
「きっと怪しい筋に違いない」
「コンサートが終わってからでいいや、そんなの」
と、ポイとレターラックにしまい込んでしまう。
光のその様子にムッとしたのがルシェール。
「光君、あのね、わざわざイタリアから光君に手紙をよこしたの」
「せめて差出人のスペルを見せて」
と、有無を言わせずレターラックから、その手紙を取り出した。
そして、ルシェールは、驚いて見たり、光を厳しく見たり。
「あのね、これ、バチカンの教皇庁から」
「よほどのことだよ、光君」
「どうして、そういい加減なの?」
珍しく怒り顔のルシェールを、春奈が珍しくなだめる。
「ルシェール、おなか減ったの?だから怒るの?」
「でもね、光君に、そういうマメなことを期待してはいけないの」
「いい?真面目なのは音楽だけ、それ以外はアホでナマケモノで無粋」
「だから、ルシェールもわかっているでしょう?そんなに怒らないの」
この春奈の「なだめ」が、ソフィーには気に入らなかった。
「おっとりルシェールと、皮肉女の春奈さん、話がほとんど進んでいない」
「日本政府として、手紙を開けるよ」
「どうせ、アホの光君は読めない」
今度は光がムッとする中、ソフィーは手紙を開けてしまう。
そこに近寄ったのが、ルシェール、サラ、そしてキャサリンだった。
「マジ?ローマ教皇様?」
ソフィー、ルシェール、サラ、キャサリンは完全硬直状態になっている。




