お祈り反対デモが始まった ルシェールの祈り
傲慢新聞記者は、地域の警察官により力なく連行されて行った。
その姿を見た岩崎義孝は腕を組む。
「程度の低い男だったけれど、やはりコンサートの話は知っていた」
「会場だけでなく、準備段階で警備を徹底しないといけない」
ソフィーも、それには頷く。
「簡単に倒せる相手だから良かったけれど」
そして、岩崎義孝には言わないけれど、心の中では考える。
「門番の金剛力士も、ソフィーが大天使ガブリエルにならなくても退治できるから、門から通した」
「ただ、程度の低い、何でも反対、妨害の連中が動く可能性もある」
「その対策も考えなければならない」
さて、ソフィーと岩崎義孝が、音楽部の練習を見ていると、江戸の大親分から連絡が入った。
「鏡の前で祈る人たちに、妨害デモを行う集団が出始めた」
「何でも、政府による祈りのお願いは、信教の自由を侵害し、人権侵害で憲法違反に当たるとか」
「あまりの多くの人が鏡の前で声をあげて祈るのは、騒音そのもの」
「平和で静かな生活権の侵害で、これも憲法違反」
「宗教家による祈りのお願いも、無宗教の人には、迷惑」
「だから、そのストレスに対する損害賠償を請求するとか」
岩崎義孝は、それには呆れた。
「地球が壊滅すれば、憲法も人権もないけれど」
「こういう人たちは、それがわからない」
「鏡には、なかなか手が届かないから、その前で祈る人にケチをつけて、自分たちの程度の低い、子供じみた欲求不満をぶつける」
「だからと言って、地球の壊滅を阻止する対案など、何も持たない」
ソフィーは、呆れているだけではいかない。
「いろいろ、ありがとうございました」
「とりあえず、公安に戻って、トラブル防止を考えます」
と、岩崎義孝に頭を下げ、学園を後にした。
ルシェールは、赤坂の大聖堂で、聖母マリアに祈りを捧げていた。
「光君のコンサートが無事に成功しますように」
「地球の壊滅が起こりませんように」
「人々の平安が守られますように」
「いつも、お願いばかりで、申し訳ありません」
懸命に祈り続けるルシェールが気になっていたのは、大聖堂の屋根に設置された鏡に向かって祈る多くの人たちと、それに反対するプラカードを掲げた反対派のトラブルが出始めたこと。
こうして祈っている最中にも、祈りの声と反対の大合唱が重なってて聞こえてくる。
ルシェールは、悲しくて涙が出てきた。
「マリア様、これこそ、申し訳ありません」
「私どもの力不足で、こんな事態に」
「ああ・・・どうしたら・・・」
「お助け下さい、お知恵をお授けください」
ルシェールが大泣きになって、大聖堂の床に突っ伏した時だった。
異変が起きた。
祭壇の前に、白い光輪が浮かび上がり、そのまま白い長衣を着た女性の姿が明確となる。
そして、その女性がルシェールを手招きをする。
「ルシェール、お願いがあるの」
ルシェールは、身体を起こして、白い長衣の女性に走り寄った。




