世界に起きる異変 地蔵菩薩の出現
異変は、次々に発生した。
世界各地の宗教施設などに設置された神像や仏像が、聖母マリアの出現と同時に、輝き始めた。
また、宗教施設とまでは言えない、道端の石仏、山中の岸壁に彫られた摩崖仏のようなものまで、輝き始めたのである。
「聖母マリア様の出現も驚くけれど」
「拝めば拝むほど輝きを増すような感じ」
「それで、元気がもらえるよ」
「世界の暴動も、相当減ってきているみたい」
「いつも戦争ばかりしている中東でも、かなり減ったって」
最初は完全に批判的だった、マスコミや科学者たちも、好意的な報道姿勢やコメントに変化した。
「最後の望みに掛けよう」
「ただ祈るだけで、鏡が輝く」
「不思議に他宗教が拝んでも、どの鏡も反応するようだ」
「多く祈れば、それだけ声の振動が蓄積する、それが何らかの力になるらしい」
「地球の壊滅阻止には、地球内での対立は無意味、協力し合うのが当然」
そんな世界全体の盛り上がりの中、光は毎晩、プラネタリウムに籠る。
そして、そのまま、プラネタリウムの椅子で寝てしまうことも多い。
また、巫女たちも、そっと光を見守る。
ソフィー
「今は、光君は、大隕石破壊のタイミングを慎重に計算している」
春奈
「余計な皮肉は言えないよ、今回だけは」
由香里
「春奈さんの皮肉には本当に要注意、光君の邪魔をして地球を壊しかねない」
由紀
「うん、あり得る、でも光君もそれは計算済みでは?」
ルシェール
「光君は、春奈さんには無関心、いや女性には、ほぼ無関心だから気にしないでいいかなあ」
他の巫女もそんな感じ、ただ見守るしかない状態の中、懐かしい異形がプラネタリウムに出現した。
坊主頭に袈裟、錫杖と宝珠を持った地蔵菩薩である。
「光君も、よく努力されています」
「それから、巫女様たちも、しっかりと光君を支えられて」
「この地蔵も、聖母マリア様も、世界各地の御神霊も感謝しております」
巫女たちが感激して、地蔵菩薩に手を合わせていると、光も天体の観測を一時停止、地蔵菩薩の前に歩いて来て。頭を下げる。
「こちらこそ、ありがとうございます、お地蔵様」
「今回は世界の各地を?」
地蔵菩薩は、柔和な顔。
「はい、全ての御神霊のご協力を、いただいて参りました」
「地球壊滅の危機に、御神霊も対立をする理由はありません」
光も地蔵菩薩に柔和な顔。
「後は、タイミング、その時期だけです」
「最後は、全世界の大祈祷の日程」
地蔵菩薩は深く頷いた。
そして、その手の平に置いた宝珠を、光の前に差し出した。
光は、地蔵菩薩の宝珠を手に取った。
宝珠は、光の手の平の上で、不思議な輝きを始めている。




