カルラ神と阿修羅の怖ろしい会話
超高級懐石料理店に光を尋ねて来た「客」は、八部衆の鳥神、カルラだった。
そのカルラ神に光はにっこり。
「ずっと銀座のストリート演奏を見ていたの?」
カルラ神は軽く頷く。
「ああ、変な輩が出ないようにとね、まあいなかったけれど」
光の目の色が濃くなった。
「それでも、こうしてここまで来るというのは、何か特別のことかな」
カルラ神は、今度は深く頷く。
「どうもな、上から見ていると、不思議が多い」
「海流の動きも変だ」
光は、この時点で真顔。
「そろそろ、動きが始まるのか」
「大宇宙の破壊神が動き始めたか」
カルラ神の目が厳しくなった。
「すぐに地球を叩き壊すというのではない」
「さんざん、脅しをかけ、被害を負わせて、弱らせてから叩き壊す」
「まさに痛みを喜びとする悪神の所業」
光は阿修羅に変化して、語る。
「例えば、性質の悪い拷問を行い、死に至らしめる」
「一日中、鞭で叩き続け、痛みを与え続ける」
「次の日は、何もしない」
「しかし、その次の日は、また一日中鞭で叩く、あるいは別の拷問」
「そんなことの繰り返しで、人を殺す」
カルラ神は厳しい顔を変えない。
「その何もしない一日が、実は怖ろしい」
「明日は、何をされるのか、どんな痛みを味わうのか」
「鞭責めで爛れた皮膚のまま、やぶ蚊の群れに放り込むとか」
阿修羅は、また別の話。
「例の串刺しも、残忍だ」
「大きな木を串に削り、処刑する人間の肛門に突き刺す」
「人間はその体重により、次第に串が体内に深く入り続け、苦痛が強くなる」
「これは後世、ドラキュラ公と言われたルーマニアのブラド・ツェペシュの処刑として有名」
「まあ、彼もオスマン・トルコでその処刑法を学んだのだけれど」
カルラ神は哀しそうな顔。
「緩慢にして残虐な死刑だ、あれなら、そのまま首を切ったほうが楽だ」
「ただ、苦しみを与えたい輩は、そんなことはしない」
「ゆっくりジワジワと痛めつけ、絶望に泣き叫ぶ姿を喜びとする」
阿修羅はカルラ神を直視。
「とにかく監視を続けてくれ」
「対策は、すでに打ってあるけれど」
カルラ神は、頷く。
「その対策の一つとして、諏訪大神か」
「あの御力が確かに必要だ」
阿修羅は、声を低くする。
「その通り、少ししたら、八ヶ岳にも出向く」
「そこで、仕掛けをする」
「それが、今回の対策の重要なポイントの一つ」
「だから、より一層の厳重な監視と警護が必要」
カルラ神は再び頷き、その途端、姿を消してしまった。
そして阿修羅は、光に戻っている。




