華奈と光の深夜デート
華奈はノックもしないで、光の部屋に入った。
それは下手にノックをして、眠り込んでいる光を無理に起こしたくなかったことと、万が一、「朝起きたらでいいよ」と、光に追い返されることも考えたため。
そして部屋の照明もつけない。
そのまま、光のベッドに向かう。
声をかける気はないし、一緒に寝ようとは思っていない。
「とにかく、見ているだけでもいい」
「光さんの近くにいたい」と、思っただけだった。
しかし、そのベッドに、光はいなかった。
華奈が首を傾げて、ベッドを触って確認するけれど、シーツは少しは乱れているけれど、冷たい。
「光さん、一旦眠って、それから起きて、どこかに行ったのかな」
「お母さんの写真があるピアノかな」
「お母さんと話をするのかなあ」
と思ったので、階段をおりて、ピアノのあるリビングに入った。
しかし、ここでも、光の姿はない。
「そうなると・・・真夜中に外出?」
「どこに行ったの?」
「また、危ない何かが起きたの?」
「嫌だよ、華奈をおきざりにしないでよ」
華奈は、寂しくて涙も出てくる。
それでも華奈は、頭に浮かんだのはプラネタリウムのこと。
「もしかして、鏡に何か」
「それとも、宇宙を探っているのかな」
「光さんは、時々、超几帳面だから」
「私が行くと、邪魔かなあ」
「足手まといかなあ、難しい観測をしていると」
そこまでは思ったけれど、華奈は結局、光のそばにいたいという気持ちは、抑えきれない。
大広間で雑魚寝している巫女たちに気づかれないように、足音を立てないように、そっと歩いて、アパート屋上に設置したプラネタリウムにたどり着いた。
「うん、何かしている」
華奈は、プラネタリウムの中に、小さなランプと揺れる人影を確認した。
「光さんだ、あの人影」
「入ると邪魔しそうだから、ここで見るかな」
そう思って、外から少し見ていると、光の影がプラネタリウムの入り口に近づいてきた。
「華奈ちゃん?」
光の声だった。
華奈は、ドキッとして、ただ「はい・・・」と答えるのみ。
「おいで、寒いでしょ?」
光は、すごくやさしい声。
華奈は、またウルウルとなる。
プラネタリウムのドアを開けて入ると、光はやさしい顔で立っている。
華奈は声が震えた。
「光さん・・・邪魔かな?」
光は、華奈の頭をなでた。
「いいよ、華奈ちゃん、大丈夫」
「眠れなかったの?」
「しょうがないなあ」
華奈は、この時点で、我慢出来なかった。
そのまま、光にむしゃぶりついて、泣き出した。
言葉も何もない、ただ、泣いているだけだった。
「大丈夫、華奈ちゃん、大好きだよ」
「簡単にいなくなったりしないから、安心して」
光は、しばらく華奈を抱き、やさしく背中をなで続けた。




