炸裂!楓の大文句 楓の大きな荷物の目的
楓の文句は止まらない。
「ねえ、光君、うるさいのが来たって言ったよね」
「その、うるさい、って誰のこと?」
「ま・さ・か、私ではないよね」
「あのさ、どうせ光君がメソメソしていると思ったから、来てあげたの」
「それを何?」
「ルシェールのふくよか胸でメソメソして!」
そこまで言われて、光はようやく反論。
「楓ちゃん、文句はいいけど、何しに来たの?」
「そんな大きな荷物を持って、試験勉強はいいの?」
「しっかり合格しないと、斎藤さんとデートできないでしょ?」
ただ、光の反論は、愚問だったようだ。
巫女たちは、顔を見合わせることなく、全員が耳栓をする。
その楓は、思いっきり息を吸い込んだ。
光は、まだ意味不明なので、キョトン顔のまま。
「あ・の・さ!」
リビング全体が震えるような楓の大声だった。
何しろ、ピアノの上に置かれた光の母菜穂子の写真でさえ、揺れている。
「光君!メール送ったのに見ていないの?」
「私の恋心は成就したの!」
「もうね、寝る間も惜しんで、好きなコロッケもお菓子も食べず!」
「毎日、にゅうめん!」
「それはいいけど、斎藤さんと同じ大学に推薦決定したの!」
「それ、メールで送ったよね!」
「ま・さ・か!」
「見てない?三日前だよ!」
「それなのに、お祝いの言葉一つない!」
「他の巫女さんからは全員来たよ!」
「合格祝いのプレゼントまで全員から来た!」
この時点で、光の身体は、少しずつ後ずさり。
「よくしたもので」、巫女の誰も、光を支えない。
不安を覚える光は、必死に抗弁を開始した。
「あの・・・スマホの充電が・・・最近電池が減るのが早くて」
「晃子さんとのリサイタルとか・・・」
「官邸に行ったり・・・」
そんな抗弁で、楓の怖い顔が変わるはずがない。
有無を言わせない顔で、光からスマホを奪い取る。
「・・・ったく・・・」
「メール未開封は30を越え・・・」
「着信あって返答なしは、50を超え」
「メールを開いてあるのは、政府関係だけ?」
「電話応答もそうか」
「ほんと、女心の扱いは、アウト」
「そして、それを許している、ここの巫女たちの、情けなさ」
「光君が、こんな人と思って諦めたのか」
・・・・・
大きな声から一変、ブツブツと言い続ける楓も、また怖い。
それでも幼馴染の華奈が、恐る恐る楓に尋ねた。
「ねえ、光さんは、ともかくね、その大きな荷物は?」
「・・・もしかして・・・泊まるの?」
楓の表情は、途端に一変、超ニンマリとなっている。




