星空バーベキュー 綾子の告白
当初は屋外で星を眺めながらのバーベキュー計画は、光の体調を考慮して、屋内に変更された。
ただ、屋内と言っても、さすがに岩崎財閥の別荘。
全面クリアガラス張り屋根の広い部屋があり、星空を見るには、全く差し支えない。
さて、そのバーベキューは岩崎義孝の挨拶で始まった。
「今日は、光君と皆様のお陰で、実に有意義な一日となりました」
「悪徳人身売買に加担した政治家、極道の一味の退治と、可哀想な子供たちの保護」
「それから、綾子さんのおばあさんの家では、本物の信州そばを美味しく賞味いたしました」
「諏訪大社においては、実に神がかった名演奏」
「ここに、私から感謝の意を込めまして、ささやかではありますが、バーベキューをセッティングいたしました」
「充分にご堪能ください」
本来はここで光が乾杯の音頭を取るけれど、まだ湯あたりから、回復途上で無理。
しかたなく、ソフィーが代表して乾杯の音頭。
「はい、ご覧の通り、体力不足の光君は、立つのも大変」
「そこで、光君の代理として、乾杯の音頭を取ります」
「今日は、皆様、本当にご苦労様でした」
「悪漢どもを成敗し、素晴らしい人助けができました」
「諏訪大社神前演奏も実に素晴らしかった」
「日本政府を代表して、感謝いたします」
「それでは、今日一日の感謝と今後の皆様の健康と成功を祈願し、乾杯といたします」
「乾杯!」
・・・と、乾杯となるけれど、巫女たちはブツブツ。
「ソフィー・・・長い・・・」
「超カタ過ぎ・・・つまんない」
「岩崎さんより長いって何?」
「メチャ役人っぽい、日本政府を代表してって何?」
・・・・
ただ、そんな巫女のブツブツは長くは続かない。
さすが岩崎財閥が提供するバーベキューの素材は超一級品。
牛肉、豚肉、鶏肉、野菜に至るまで、とても市中の食料品店では手に入らないようなものが揃っている。
そして、巫女たちは、文句を言うよりは、焼いて食べることに夢中。
ボンヤリと座っているだけの光には、ほとんど見向きもしない。
それでも、光に焼いた肉などを持って来たのが柏木綾子。
「光さん、小さ目な肉にしました」
「お口に入るかと思って」
「それから、ノンアルコールのビールです」
光は、柏木綾子にうれしそうな顔。
「ありがとう、綾子ちゃん、これで良かったのかな」
「お肉も食べやすくしてくれて」
「ノンアルコールビールも助かります」
その光の言葉がうれしいのか、柏木綾子は光の隣に座る。
「本当に光さんには、いくらお礼を言っても、尽きません」
「私も救ってもらって、両親も・・・」
「それから、今日はいとこの玉雄君、それから諏訪大社まで」
柏木綾子の目が潤んだ。
「私、もう、光さんから離れられません」
「一生、おそばに置いてください」
「そうでないと、生きて行けない」
「大好きです、光さん」
光は、泣きだしてしまった綾子の身体を、腕を回して支えている。




