恒例、大逆転 議員と悪徳そば店を成敗。
田中議員の言動と食事の場での気まずい雰囲気に、光たちも食欲が失せてしまった。
光が立ち上がると、岩崎義孝も含めて全員が立ち上がる。
すると、焦るのがそば店の店主。
「あの・・・お食事は?これで?」
その言葉に応えたのが光だった。
「はい、雰囲気も悪く、とても旅行中での食事の楽しみが味わえません」
「それと、この蕎麦にしろ、嘘です」
今までは、岩崎義孝に頭を下げるばかりの、店主の顔が、光の言葉で変わる。
「何だと?そこのガキ!」
「ここの蕎麦が嘘?ざけんじゃねえ!」
「いいか、お前らガキが食うようなジャンクフードじゃねえんだ!」
「おい!謝れ!何様のつもりだ!」
すると今度は、田中議員も怒りだした。
「おい!謝れよ!そこの坊主!」
「この信州で、ここの店の料理をけなすって、とんでもないことだぞ!」
「それも、国会議員の俺の前で!」
「おい!お前の学校名を言え!」
「国会質問で取り上げて廃校にするぞ!」
光は面倒そうな顔。
「ジャンクフードがどうのこうの、信州の名店がどうのこうの・・・」
「国会議員がどうのこうのの前に」
「ここの蕎麦って、10割って書いてあるけど、本当に10割なんですか?」
「僕の舌には、どうしても、三七、四六にしか思えない」
その光の言葉が相当に気に障ったらしい。
田中議員は、岩崎義孝の卓にあった蕎麦をせいろごと、掴んでしまった。
そして「この馬鹿ガキ!」と、光に向って投げつける。
光は、軽く身をかわし、壁にそばが汚らしく飛び散っている。
次の瞬間、ソフィーが特別室の中央に立った。
「はい、私は公安特別調査官のソフィー」
「それから、今、意見を申したのは、総理が特別にお願いをした直轄の調査官の光君」
「光君の名前くらいは、田中議員も御存知のはず」
田中議員の顔が蒼くなった。
「え・・・まさか・・・この子が光君?」
「手出しは危険と、我が党の幹部からもお達しが・・・」
震えだした田中議員にソフィーがタブレットを提示。
「ここの特別室に入った時点から、店主、そして田中議員の言動は全て、官邸、長野県警、田中議員の政党事務所、そしてマスコミに動画を送っています」
「まあ、非礼な態度、暴言、暴行の限り」
肩を落とす田中議員を横目に、ソフィーはそば店の店主を見る。
「店主、おそらく光君の言う通り」
「どう味わっても、この蕎麦は10割ではない」
「香りがないし、歯ごたえも本物の蕎麦ではない」
「まあ、調理現場を見ればすぐにわかること」
ソフィーは、そこまで言って、一呼吸。
「国税に一言、連絡しておきます」
今度は。そば店主の腰が抜けてしまった。
少し黙っていた光が口を開いた。
「田中先生、それから、店主、もう少しお付き合いをいただきます」
「簡単には許せないので」
田中議員とそば店の店主は、またしても恐怖に震えている。




