表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
203/303

特別室で蕎麦懐石 押しかけた政治家に岩崎義孝は厳しい指摘

光たちの一行が案内された特別室は、広々とした日本庭園が見える奥座敷。

畳、座椅子、テーブル他全ての調度品が相当な高級品。

まるで一流料亭にいるような雰囲気になっている。


尚、その特別室に入り、上座にされたのは岩崎義孝。

光たちを含めて他の人は、年配の仲居に「あんたたちは、そこらへんに並んで座って」と、適当に座らされる。

この対応の格差には、不満そうな巫女も多いけれど、光は何の反応もない。

時折、岩崎義孝と目配せをするのみになっている。


そして料理が運ばれだした。

店主自らが説明をする。

「当店自慢の蕎麦懐石にございます」


確かに「懐石」らしく、それなりの料理が運ばれてくる。

先付として、クリームチーズ豆腐、あん肝旨煮、いぶりがっこ 。

揚げ物として、聖護院大根おかき揚げ、かぼちゃ万頭。

お椀は鴨のつくね、九条ねぎ、京人参のお椀。

向付がザーサイ塩昆布など。

おしのぎは、新そば。

最後の水菓子がわらび餅だった。


それを食べる巫女たちは、様々。

「うーん・・・普通の蕎麦だけでよかった」

「一品一品は美味しいけど、なんか・・・味の連携がない」

「信州で京人参のお椀を食べてもねえ」

「どうして蕎麦屋でザーサイ?」

「新そばだけど、二八でなくて、三七?いや四六?蕎麦粉の配分が少ない」

「だから蕎麦の香りが出ない」


岩崎義孝も、時折首を傾げて食べているので、店主は焦り顔。

それでも岩崎義孝には言わずに、光たち若い人を一瞥。

「いや、これは、今時の若い人にはわからない食通の味なんです」

「今の人はハンバーガーとか、ポテトチップスとかのジャンクフードばかり、こういう味には不慣れなんでしょうね」

「おまけに、外国人の若い娘さんもおられる、そうなると、この繊細な味は理解できません」


その発言には、岩崎義孝も含めて全員が呆れた顔をしていると、また別の仲居が特別室のドアを開けた。

「旦那様、議員先生がお見えです」

その声も緊張気味なので、相当に「偉い議員先生」との察しがつく。

店主は、大きく頷く。

「ありがとう、お通ししてくれ」


すると間もなく、「偉い議員先生」が満面の笑顔で入って来た。

「いやーーー!岩崎様!お越しになられるなら、もっと早くおっしゃってくれれば」

「こんな貧相な料理でなくて、しっかりとご接待さし上げられたのに」


ソフィーは、その満面の笑顔の「議員先生」を見て、嫌そうな顔。

「実は政治資金報告書は嘘だらけ」

「政権与党でないから、追及されないだけ」


さて、いきなりの議員の訪問を受けた岩崎義孝は、苦々しい顔。

「田中議員、どうしてここに?」

「私たちは食事中で、少なくとも、この部屋に入る前に、一言あるべきなのでは?」

「それに、私たちが食べている料理を、粗末な料理とは、どのような神経で?」

「挨拶をしに来たとしても、そもそも人間として無礼」

「それから、美味しい不味いにかかわらず、他人が食べている料理を粗末とけなすのは、どのようなお考えか」


岩崎義孝の指摘は厳しい、田中議員の顔は真っ青になっている。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ