特別室で蕎麦懐石 押しかけた政治家に岩崎義孝は厳しい指摘
光たちの一行が案内された特別室は、広々とした日本庭園が見える奥座敷。
畳、座椅子、テーブル他全ての調度品が相当な高級品。
まるで一流料亭にいるような雰囲気になっている。
尚、その特別室に入り、上座にされたのは岩崎義孝。
光たちを含めて他の人は、年配の仲居に「あんたたちは、そこらへんに並んで座って」と、適当に座らされる。
この対応の格差には、不満そうな巫女も多いけれど、光は何の反応もない。
時折、岩崎義孝と目配せをするのみになっている。
そして料理が運ばれだした。
店主自らが説明をする。
「当店自慢の蕎麦懐石にございます」
確かに「懐石」らしく、それなりの料理が運ばれてくる。
先付として、クリームチーズ豆腐、あん肝旨煮、いぶりがっこ 。
揚げ物として、聖護院大根おかき揚げ、かぼちゃ万頭。
お椀は鴨のつくね、九条ねぎ、京人参のお椀。
向付がザーサイ塩昆布など。
おしのぎは、新そば。
最後の水菓子がわらび餅だった。
それを食べる巫女たちは、様々。
「うーん・・・普通の蕎麦だけでよかった」
「一品一品は美味しいけど、なんか・・・味の連携がない」
「信州で京人参のお椀を食べてもねえ」
「どうして蕎麦屋でザーサイ?」
「新そばだけど、二八でなくて、三七?いや四六?蕎麦粉の配分が少ない」
「だから蕎麦の香りが出ない」
岩崎義孝も、時折首を傾げて食べているので、店主は焦り顔。
それでも岩崎義孝には言わずに、光たち若い人を一瞥。
「いや、これは、今時の若い人にはわからない食通の味なんです」
「今の人はハンバーガーとか、ポテトチップスとかのジャンクフードばかり、こういう味には不慣れなんでしょうね」
「おまけに、外国人の若い娘さんもおられる、そうなると、この繊細な味は理解できません」
その発言には、岩崎義孝も含めて全員が呆れた顔をしていると、また別の仲居が特別室のドアを開けた。
「旦那様、議員先生がお見えです」
その声も緊張気味なので、相当に「偉い議員先生」との察しがつく。
店主は、大きく頷く。
「ありがとう、お通ししてくれ」
すると間もなく、「偉い議員先生」が満面の笑顔で入って来た。
「いやーーー!岩崎様!お越しになられるなら、もっと早くおっしゃってくれれば」
「こんな貧相な料理でなくて、しっかりとご接待さし上げられたのに」
ソフィーは、その満面の笑顔の「議員先生」を見て、嫌そうな顔。
「実は政治資金報告書は嘘だらけ」
「政権与党でないから、追及されないだけ」
さて、いきなりの議員の訪問を受けた岩崎義孝は、苦々しい顔。
「田中議員、どうしてここに?」
「私たちは食事中で、少なくとも、この部屋に入る前に、一言あるべきなのでは?」
「それに、私たちが食べている料理を、粗末な料理とは、どのような神経で?」
「挨拶をしに来たとしても、そもそも人間として無礼」
「それから、美味しい不味いにかかわらず、他人が食べている料理を粗末とけなすのは、どのようなお考えか」
岩崎義孝の指摘は厳しい、田中議員の顔は真っ青になっている。




