VS生贄復活集団(3)
ソフィーが調べて来たことを端的に全員に説明する。
「諏訪大社に古来から関係が深い氏子、つまり御頭衆に、確かに神使いを復活するとのお触れが、突然回った」
「それも、相当な崩し文字のお触れ文、差出人は、人名を書いていない」
「ただ、『守矢神長』とのみ」
「綾子ちゃんの従兄の玉雄君の家にも届けられている」
「それから、周辺の孤児施設の15歳の男子が、次々に行方不明に」
その話まで進んだ時点で、ソフィーの顔が曇った。
「ところが、捜索願は何も出されていない」
「だから、警察関係者は何も把握していない」
「もっと言うと・・・」
ソフィーの声が珍しく震えた。
「行方不明になった男の子たちは・・・戸籍が無い子供たち」
「つまり、住民登録されていない子供たちなの」
そのソフィーに春麗が反応する。
「うん・・・中国大陸とか・・・それ・・・あるかも」
「出産制限のある国は、生まれても、役所に届け出ない親もいる」
「当然、教育も何もない、学校にも行かない」
「そのまま育って、死んでも、戸籍が無いから、何の記録も残らない」
春奈も、少し知識があるようだ。
「日本人でもわかっているだけでも、毎年500人は発生しているとか、今は1万人を超えているとか」
「結婚無しに子供が生まれて、世間体を憚って届け出をしない」
「学校に一度も通ったことのない人や、無戸籍のまま30年以上生きてきた人もいる」
「背景には、DVや離婚の増加」
「夫の暴力から逃げ出し、居場所を知られるのを恐れて正式に離婚もできずに歳月が経ち、新たな内縁の夫との間に子供が生まれた場合、法律上は前夫の子と推定され、前夫の戸籍に入る」
「だから、前の夫に知られ、暴力を再び受けることを恐れて、母親が出生届けを出せず、子どもが無戸籍になってしまう」
「そして結局育てきれなくて、そのまま施設に置き去りにするとか」
「あまり考えられないけれど、悪徳施設は住民登録も学校に通わせることもしない」
「戸籍が無いのだから、法律上の人間ではない」
「だから、何をしても、犯罪にはならないと思うのかもしれない」
ソフィーの顔が難しくなった。
「生贄を無理やり要求された御頭衆から、大金がそこの施設に渡っているらしい」
「つまり、生贄の身代わり」
黙って聞いていた財閥当主岩崎義孝の顔が、真っ赤になった。
「実に許せん、非道の限りだ」
「結局は、非道に非道を重ねた、あさましい人身売買じゃないか!」
「しかも、生贄として殺すのが前提なんて、悪魔の所業だ!」
光が、岩崎義孝に声をかけた。
「岩崎さん、ご協力をお願いできますか」
「それもあって、聞いていただいたのです」
岩崎義孝は、真顔。
「当然です、我がグループの総力をあげて、そんな輩は叩き潰します」
孫娘の岩崎華も、顔が真っ赤、泣きだしている。
「私も絶対許せない!だって同い年の男の子だよ」
「親に捨てられ、施設に売られて、そのまま殺される?」
光は、望月梨花に声をかけた。
「このことは、世間に口外しないでほしい」
「大騒ぎになると、生贄行事が早まる可能性が早まるとか、逆にもっと闇に紛れて行われる場合がある」
望月梨花は、話のあまりにも恐ろしい展開に、全く声が出せない。
光
「心配なら、ここの御屋敷に当分、泊まって欲しい」
岩崎義孝が望月梨花に指示を出した。
「私が君の上司に話をしておく」
「当分、光君の一行に加わると」
まだ声が出せない望月梨花に光。
「全て解決したら、諏訪大社で星空のコンサートをするよ」
「そのコンサートの企画立案名目で、合宿でどうかな」
望月梨花は、ようやくホッとした顔。
「わかりました、それでは早速手配を」
「光君のピアノと、ここにおられる皆様でコンサート企画を作ります」
ルシェールが望月梨花の手を握る。
「私と一緒の部屋でお願いします」
そこまで話がまとまり、望月梨花も、光の家に週末連休の旅行当日まで、泊まることになった。
尚、岩崎華も柏木綾子と、同室に泊ることを、祖父義孝に許可された。
また、華奈も母の美紀に珍しく光の家に泊ることを許された。
ただ華奈は当初、光との同室を強く希望したけれど、母美紀と巫女たちの「ものすごい視線」にて撃沈。
仕方なく気が合う春麗と一緒の部屋で寝泊まりすることになった。




