「恒例」華奈の文句と完敗 信州旅行計画
光が肩を落として学園長室を出ると、華奈がご機嫌斜めで待っている。
そして、いきなり文句を言い始める。
「あのね、光さん、どうしてウカツなの?」
「晃子さんと共演って何事です?」
「あのね、晃子さんって、魔女なんです、それ、理解していますよね」
「少々の美形で、胸が大きくて、大人女子ってだけではないですか」
「私の若さと美貌と可愛らしさには、及びもつきません」
「それなのに共演なんて、何を考えているんです?」
光は、いきなり文句を言われてうろたえる。
「そうは言ってもさ、音大の学長と小沢先生の指定で」
「僕のプロとしての仕事なんだって」
しかし、華奈は、まだ怒る。
「もーーー!そういう態度が困るんです」
「仕事と私のどっちが大事?」
「妻より仕事を、しかも魔女との仕事を優先させるって、あまりにも不見識」
「もうね、こうなったら柱に縛り付けて軟禁します、決定です!」
完全にヘキエキ状態の光に、援軍が現れた。
まずはキャサリンだった。
ブンと華奈を軽く押しのけて、光の隣に立つ。
「華奈ちゃん、いつもの戯言は、誰も聞いていないよ」
サラも光を警護する。
「文句があるなら、華奈ちゃんも光君と共演できるくらいにヴァイオリンを練習しなさい」
春麗はいつになく、華奈を叱る。
「華奈ちゃん、好きだったら、好きな人の足を引っ張らないこと」
「そればかりすると嫌われるよ」
華奈は三人の超強力指摘に打ちのめされ、完敗状態。
今度は華奈が肩を落として、音楽室までの廊下を歩くことになった。
その光たち一行が音楽室に入ると、既に祥子先生から、音楽大学による指導が伝えらえていたようで、音楽部と合唱部員たちは期待と不安が入り混じった複雑な表情ばかり。
光は、指揮台にのぼり、音楽部全員に声をかけた。
「素直に、謙虚にレッスンを受けて、努力してもらえば、問題はありません」
「目的は、難曲、マーラーの復活を、より良い演奏、納得できる演奏にすることだけ、専門家の指導を受けられるなんて、なかなかありません」
光の説得で、音楽部と合唱部員も落ち着いたようだ。
全員が、気合の入った顔で、部室を後にしたのである。
さて、光と巫女たちが家に戻り、文化祭の疲れを癒していると、岩崎財閥の当主岩崎義孝が訪ねて来た。
そのお供に、孫の華と、財閥系列の大手広告会社の望月梨花だった。
岩崎義孝は単刀直入。
「この間、お話いただいた信州方面の旅行の件です」
「諏訪大社、八ヶ岳、そして温泉になります」
「詳しくは、望月梨花から」
その岩崎義孝の言葉を受けて、望月梨花が説明を開始する。
「プランが出来上がりましたので、ご確認をいただきたいと思います」
「まずは、バス旅行です」
「大型のサロンバスを使います」
「宿泊施設は、岩崎財閥の別荘となりますので、お気兼ねなくお使いください」
そして、光の顔を見た。
「全ての連休をおさえてあります、いつになさいますか?」
光の結論は早かった。
即座に、「今週末」と答えている。




