音大からのコンサート協力申し出、怠けられない光
学園長室に集まったメンバーは光、音楽部顧問の祥子、合唱部部長の由紀。
それに加えて大指揮者の小沢、音大の学長、ヴァイオリニストの晃子。
学園長が話をはじめる。
「まずは学園祭の音楽関係のパフォーマンスは最高でした」
「学園長として、感謝します」
学園長が頭を下げたので、光と祥子、由紀が頭を下げる。
学園長が話を続ける。
「この後は、合唱部のコンクール、そして音楽部と合唱部の合同とも言える、マーラーの交響曲復活のコンサートになります」
光、祥子、由紀が頷いていると、学園長が音大の学長に頭を下げ、話を続けた。
「ありがたいことに、来春、光君が進学する音楽大学で、オーケストラ指導と合唱指導に協力をいただけることになったのです」
「マーラーの交響曲は、やはり難曲、高校生では難しい部分もあります」
音大の学長が笑顔で学園長に続いた。
「小沢先生にも聞いていたけれど、スクールアイドルのパフォーマンスから始まって、ジャズ、合唱、そしてオーケストラまで、ここの学園の音楽部は、実に面白いのです」
「素直に音楽を演奏する楽しみに満ちていると思います」
「これを機会として、提携関係も結びたいほどで」
大指揮者の小沢が光に声をかけた。
「細かな打ち合わせは、光君とも相談するよ、それでどうかな」
光も進学する音大の学長と子供の頃から知っている大指揮者の小沢に言われては仕方がなかった。
「ありがとうございます、それでは、一度練習を見て、聴いていただいて」
「祥子先生と合唱部が異存がなければ」
と、音楽大学の指導を受けることになったのである。
そこまでの話がまとまった段階で、祥子先生と由紀は学園長室から退出となり、光だけが残された。
つまり、学園長と音大側が光だけに話がある、ということになる。
音大学長。
「光君は学園長にお伺いしたところ、学業の成績も素晴らしいとか」
「我が音大への進学も決定済」
「それで、お願いがある」
学園長は少し笑う。
「光君には特に受験指導もないので、特別授業もありません」
「簡単に言うと、光君には相当程度の空き時間が発生するのです」
光が首を傾げていると、小沢。
「つまり、空き時間に音大で指導したいとの意味」
光は、そこまで言われて、ようやく一人残された意味を理解する。
「う・・・考えていなかった」
そして、少し悩む。
「ということは、遊んでいられないってこと?」
「それはマジに大変なことだ」
「ここの学園で授業を受けて、音楽部と合唱部の指揮をして」
「空いた時間に、音大で指導を受ける?」
答えをもたつく光の肩をヴァイオリニストの晃子が、ポンと叩く。
「あのさ、どうして決断がノロマなの?」
「今度、私、ヴァイオリンのリサイタルをするの」
「いい?光君、伴奏しなさい!その指導もあるの」
光は、「はぁ・・・」とため息をついて頭を抱えるけれど、学園長、小沢、音大学長は大笑いになっている。




