VS芸能プロダクションのスカウト
光と巫女集団、そして由香利の父(江戸の大親分)まで加わったR&Bのストリート演奏は、大好評の中、終わった。
アンコールの声が数多く出ていたけれど、ソフィーがおさめた。
「本当に皆様、ありがたいアンコールです」
「ただ、地元警察との打ち合わせで、本日は3曲までとなっております」
「また、いずれストリート演奏をすることもありますので、その際には是非、またお楽しみになってください」
それでも、かなりな不満の声が出るけれど、光がサッとピアノから離れてしまった。
その光を警護する由紀、キャサリン、サラ、春麗も同じようにステージから降りた。
また、他の巫女は、その周囲を囲んでいる。
さて、ソフィーは数人の男と話をしている。
数人の男全員が、少々にやけた雰囲気、言葉つかいも普通の感じではない。
名刺は、超有名プロダクションの「J」となっている。
「ねえ・・・いいじゃない・・・あの男の子と女の子たち、うちの事務所でスカウトしてあげるからさーーー」
「絶対に売れるって、男の子も女の子も、超かわいいじゃん!」
「こんなストリートで三曲やるだけって、寂しくない?」
「ねーーー!あんなに盛り上がらせるんだからさーーー」
ソフィーは、反論を言わせないような言葉の連発が、実に苦々しい。
それでも、きっぱりと言い切る。
「おたくの事務所?そんな気は、あの子にはないの」
「いいから、帰って!」
「芸能界に入る気は、みんなサラサラないから」
ただ、そんな言葉では引き下がらないのが、芸能プロダクションの面倒なところ。
相変わらず気持ちの悪い言葉つかいで、粘る。
「ねえーーーいいじゃやない!プロダクションに顔を見せるだけでもさーーー」
「そこで話を聞かせてあげるからさーーー」
「そしたら、プロデビューするかどうか、決めればいいじゃない」
・・・・・・とにかく、長いので省略。
相当、ソフィーがいらついてきていると、由香利の父が顔を見せた。
すると見るからに、芸能プロダクションの男たちの表情も言葉も変わった。
「あ・・・先ほどの素晴らしいヴォーカルのお父様」
「本当に感動いたしました」
「それでですね、是非、我がJプロダクションに出向いてもらって」
「はい、できればプロデビューをなさったらいかがかと」
「はい、成功は、我が伝統あるJプロダクションが責任を持って保証いたします」
しかし、由香利の父の顔は、すごく厳しい。
ギロッと大きな目で、Jプロダクションの男たちを見回して、まず低い声。
「おい、おまえたちは、相手が若い女性の場合と、男の場合では、態度も言葉も変えるのか?」
低い声ながら、ドスのきいた響きである。
Jプロダクションの男たちは、足がすくみ始めている。
由香利の父は、声を大きめに、Jプロダクションに言い切る。
「おい!嫌がる人を無理矢理誘うな、それが大の男のすることか」
「いいか?ここで立ち去らなかったら、後は知らねえぞ」
由香利の父の瞳は、ますます厳しくJプロダクションの男たちを見据えている。




