VS滅びの教団(3)
阿修羅が上空で見たように、「滅びの教団」の悪臭を振りまく人間の大集団が学園付近を歩いている。
そして、その悪臭と異様な風体を怖がり、誰も家から外に出られない。
運悪く歩行中の人は、極力その身を商店の中に潜めるか、道を変えて少しでも離れようとする。
道路を走って来た自動車も、その集団が道路を占拠するような状態で歩いていくので、結局は全車がUターンを余儀なくされている。
そして口々に、その鼻を押さえながら、恐れの声をあげる。
「あの目が怖いよ」
「どこに向かう?」
「あの進行方向だと・・・渋谷?」
「学園の近くで、突然人が爆破されたって」
「うん、ひどく・・・臭いみたい」
「新興宗教?」
「あんなのあったっけ・・・」
「でも・・・汚らしい衣に・・・不思議な文字」
「アルファベットではないよね」
「入れ墨している人にも同じような文字」
「警察も臭くて、近づけないから・・・全員マスクをして」
その警察官一人が、先頭を歩く男に近づいた時だった。
二回目の爆発が起こった。
「ドカン!」
大地まで揺らすような爆裂音と同時に、先頭を歩いてた男はもちろん、その周囲を歩いていた異様な集団が数人、そして近づいた警察官まで、爆発。
そのまま夥しい肉塊になっている。
「うわーーー!」
「キャアーーー!」
この恐ろしい惨状に、家に隠れて見ていた人は、恐れ大声をあげる。
すると、その異様な集団が一斉に、声を出し始めた。
「この世界の滅びは近い」
「それは神のお怒りのため」
「美しい地球を汚し続けて来た人間へのお怒り」
「生き物を殺し食い」
「海も山も大地も大気も汚し」
「もはやこの世に救いはない」
「我らの歩みは、その警告」
「その歩みを止めるものは、全て神のお怒りに触れる」
「そして、まず先に滅ぼされる」
異様な集団の声は続く。
「悔い改めよ、愚かな人間ども」
「贅沢をやめ、清貧に徹すべし」
「生き物を殺すな」
「生き物を食べてはならない」
「きれいな服を捨てよ」
「全ての機械など、悪魔の道具を破壊せよ」
「身体を洗って、水を汚すな」
「笑い顔を捨て、謙虚に生きよ」
「全て、今までの悪行を反省し、下を向いて歩け」
「それをなさぬ時、お前たちは神のお怒りに触れ、そして滅ぶ」
異様な集団の後ろに、全身黒づくめの尼僧が現れた。
その手には、古びた鐘を持ち、チリチリと鳴らし始める。
そして、その鐘の音に導かれるかのように、家の中に避難していた人々が、道路に出て、充満し始めている。




