光のR&B演奏が始まる。
大楽器店の一階のステージにて光の珍しいR&Bスタイルの演奏が始まった。
最初は、「I Can't Stop Loving You」。
巫女たちのコーラス、光のピアノとヴォーカルは、すぐに来店客を集めることになった。
また、銀座の街を歩く人々も、歌声や口コミで、どんどん店の中に入って来る。
「女の子たちも可愛いし、歌も上手だけど、あの男の子が超美形でピアノも歌もこの世のもの?」
「ズンと心に染みるなあ」
「若々しい声の伸び、ハーモニーがきれい」
「音楽って楽しいなあ、ずっと聞いていたい」
すでに聴衆は300名を超えたかもしれない。
途中から、ソフィーは警護を考えるべく、コーラスを抜けるしかなかった。
ソフィーは、所轄の警察官に、少し頭を下げる。
「ごめんね、こういう話になってしまうの、あの光君がストリート演奏をすると」
その警察官は苦笑。
「ソフィー様の依頼となれば断れないですし、その上、光君です」
「それにしても・・・今はバラードだから大人しく聞いているけれど」
ソフィーも警察官の危惧はわかっていた。
「そうだね、ダンスナンバーになると、全員踊り出すね」
「まるで、ブルースブラザーズの映画みたいに」
「歩行者天国で良かったなあ・・・でも、警備が間に合うかなあ」
ソフィーと警察官が、少々不安顔になっている時点で、由香利の父が歩いて来た。
そして、ソフィーと警察官に声をかける。
「ああ、心配しなくていい」
「俺の子分が場所を作る」
「署長の許可も取った、二つ返事さ」
ソフィーと警察官が驚いていると、由香利の父の言う通り。
歩行者天国の真ん中に、光と巫女たちが乗るステージとピアノとマイクセット。
踊る場所のスペースも作られ始めている。
光と巫女たちのR&B一曲目が終わった。
囲んでいた聴衆から、万雷の拍手。
光が、恥ずかしそうに立ち上がると、また万雷の拍手。
春奈が光の脇をツンとつつく。
「このノロマ、手を振って応えなさい、教師命令だよ」
光は、「あ、そうか」と、素直に手を振ると、万雷の拍手とアンコールの大合唱。
由香利が、スッと春奈を押しのけ、光の脇に。
「光君、親父が歩行者天国にステージ作った」
「ダンスナンバーをすると、この楽器店では危険だから、そっちに行こう」
光が、「うん」と頷くと同時に、グイと光と腕を組んでしまい、ついでに他の巫女たちも、グイグイ押しのけ、歩行者天国のステージに光を引きずっていく。
春奈をはじめとして、他の巫女が何も言えない、できないほどの由香利の強さである。
ただ、これほどの聴衆に囲まれている状態、恥ずかしい巫女バトルを繰り広げることはできない。
結局、光を由香利に奪われた巫女たちは、落胆を強く覚えながら、歩行者天国のステージに立つことになった。
さて、巫女同士の心理など、よくわからない光は、のん気なもの。
「じゃあ、二曲目に行こうかな」
と、そのまま「Shake a Tail Feather」と、ダンスナンバーのイントロを弾きだしてしまう。