楓の恋(9)
楓が玄関に姿を現した時点で、光はサッとリビングに戻った。
そのため、玄関は斎藤と楓の二人きりになった。
斎藤は真っ赤な顔。
「楓ちゃん、はるばる奈良から来てくれてありがとう」
そのまま、大きな真紅の薔薇の花束を楓に差し出す。
楓もカチンコチン。
「あ・・・はい・・・ありがとうございます」
「こんな立派な花束を私のために」
「うれしいです」
と、しっかりと花束を胸に抱える。
春奈が、見計らって玄関に出てきた。
「斎藤君、玄関先でも何ですから、リビングまで」
斎藤の顔が、少し落ち着く。
「春奈先生、お久しぶりです」
「高校在学中は、本当にお世話になりました」
と、深くお辞儀。
楓が、斎藤の手を握る。
「斎藤さん、リビングに」
斎藤も楓の手をしっかりと握り返し、リビングに入った。
リビングに入ると、まず由香里が斎藤に声をかけた。
「斎藤君、おめでとう!」
「安心したよ、すごくお似合いのカップル」
由紀も立ち上がって斎藤に声をかけた。
「尊敬する斎藤さん、楓ちゃんとずっと仲良くね」
華奈はまた涙顔。
「斎藤さん!楓ちゃんは私の幼なじみなの!子供の頃からずっと一緒なの」
「だから・・・大切にしてあげて」
ルシェールが光に目で合図。
すると光は、ピアノを弾き始める。
リストの愛の夢だった。
甘く切ないメロディーが斎藤と楓を、祝福する。
斎藤は、陶然となった。
「うわ・・・楓ちゃんと逢えた上に、こんなに祝福されて、光君のピアノ」
楓も目を潤ませている。
「勇気を出して、ここに来てよかった」
「はぁ・・・崩れ落ちそう
その楓の腰を斎藤がしっかりと支える。
光のピアノ独奏「愛の夢」が終わった。
光が斎藤と楓に声をかけた。
「二人はアパートの屋上のプラネタリウムでゆっくりと」
「案内する」
光が斎藤と楓を案内している間、リビングに残った巫女たちは、様々。
春奈
「メチャ、緊張した」
ソフィー
「でも、楓ちゃんが可愛い、マジに」
ルシェール
「まさかねえ・・・あそこまでにとは」
華奈
「美しすぎてドキドキする」
由香里が巫女たちをまとめた。
「とにかく何があっても応援しよう」
その言葉に、全ての巫女が頷いている。




