楓の恋(7)
楓と斎藤のデート当日となった。
光はそれでも気をつかい、品川駅まで楓を迎えに行こうと、玄関を出る。
すると、いつもの護衛の由紀、キャサリン、サラ、春麗に加えて華奈も自宅から走って来た。
光
「あれ?いいよ、華奈ちゃん、迎えに行くだけだから」
華奈は、ムッとした顔。
「私だって、幼なじみなんです!お迎えしたいもの!」
「超美少女になった楓ちゃんを、直接見たいんです!」
それを見る巫女たちは、「実は光君から離れたくないだけ」と判定しているけれど、いつもでも道端で揉めているわけにはいかない。
結局、大人数でのお迎えとなってしまった。
さて、その品川駅で待っていると、楓が大画面モニターで見た通りの、超美少女となって、改札口に姿を現した。
光が「長旅お疲れ様」と、楓のカバンなどを持とうとすると、楓は遠慮する。
楓
「いいよ、光君、その指は大切なピアニストの商売道具」
「もう、光君だけの指ではないよ」
「私が持ちたいの」
由紀は、楓の想いを察した。
「そのカバンの中には、斎藤さんへの?」
楓がビクッと肩を震わせるので、華奈も声をかける。
「大丈夫だって、楓ちゃん、斎藤さんも本気だから」
「そんな神経を使いすぎだよ、私が持とうか?」
すると楓は首を横に振る。
「いや、私が想いを寄せる相手に渡すんだから、他人の力を借りたくないの」
「どんなに苦労しても、重くても、それが想いなの」
「この苦労が、重さが実はうれしいの」
そんな楓の言葉にキャサリンは感動。
「これこそ純愛だなあ、清らかな」
サラは、すでに涙。
「うん、心にジンジンくる、こんな恋がしたい」
春麗はため息。
「ところが、当の光君は・・・何を考えているのやら・・・」
その当の光は、山手線に乗った時点で、斎藤と話をしている。
「楓ちゃん来たよ、後は予定通りに」
斎藤の声が、また震える。
「ドキドキして、ご飯も半分だよ、どうしよう」
光は、呆れ声。
「大丈夫、オタオタしない」
斎藤は小声。
「他人事と思っていない?」
光も小声。
「いや、楓ちゃんは、いとこだから他人ではない」
「でね、あまり弱気になると、ひどいことになるよ」
斎藤は意味不明。
「・・・ひどいこととは?」
今度は、光の声が震えた。
「・・・今、楓ちゃんが怒った顔になっている」
「それは・・・また・・・いずれ」
何のことはない、すっかり会話は聞き取られているようだ。




