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楓の恋(3)

意外なことに、光の反応は早かった。

早速、斎藤に連絡を取る。

「斎藤さん、単刀直入だけど、楓ちゃんのこと」

斎藤の声もいつになく、震える。

「え・・・楓ちゃん・・・何か言ってた?」

「うわ・・・ドキドキする・・・」

「いや、ドキドキしなくていいよ」

「楓ちゃんは、斎藤さんが大好きなの」

「ただ、目の前では、珍しく緊張してしまうみたいで」

斎藤

「うん、俺も同じ、楓ちゃんを見ると、ドキドキして、普通に話せない」

「何とか、もう一度、ゆっくり話をしたいなあと」

「だから、何とか都合をつけて、逢って欲しいの」

「でも、柔道場なんて汗臭い場所はだめ、情緒も何もないし」

斎藤は、焦り声。

「そんなこと言っても、俺が自信を持てるのは、柔道場だけ」

「その柔道場でも、光君には負けたけど」

光は、ヤレヤレといった感じ。

「あのさ、僕の大切ないとこの彼氏になるんだよ」

「それに、楓ちゃんは、一途なタイプ」

「しっかり応えてあげて欲しい」

「場所は・・・奈良でもいいし、都内でも」

斎藤は、うなった。

「電話でも対面でも、楓ちゃんが可愛過ぎて、何を話していいのかわからなくなるんだ」

「だから、場所の設定は任せる」

「でも、あまり人目につかない方が」

光は、また呆れた。

「もう、しょうがないなあ」

「これからオリンピックにも選ばれるような選手が何で人目なんてビビっているの?」

「週刊誌が怖いの?まあ、あることないこと書くしね」


斎藤が黙っているので、光は「逢う場所」を決めてしまった。


光は明るい声。

「僕の家でいいよ、誰にも見られない」

「いろんな部屋もあるし」

「アパートの屋上のプラネタリウムも完成した」

「星空を見ながら、しっかり告白して、決めちゃって」

「楓ちゃんは、奈良から僕が呼ぶ」


斎藤は驚いたけれど、自分から光に頼んだ以上は、従うしかない。

「わかった、気合を入れる」

「大きな花束を持って、しっかり告白する」

「光君、本当に助かる、ありがとう」

と、最後は実にしっかりとした声で、電話を終えた。


さて、斎藤との電話を終えた光は、早速楓に電話。

「場所は、僕の家のプラネタリウム」

「楓ちゃんも気合入れてね」

「勝負服でお願い」


楓の声が震えた。

「うん・・・わかった」

「私も決める、もう、こんなモヤモヤは嫌だ」

「光君、ありがとう」


そんなやり取りを見ているだけの巫女たちには、共通する思い。

「自分の恋は?何で楓ちゃんには熱心で、私たちは何?」


光は、そんな思いには無関心、そのままプラネタリウムに向かっている。


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