楓の恋(2)
華奈がその胸をおさえて、楓に声をかけた。
「楓ちゃん・・・やせ・・・たけんやけど・・・」
「あの・・・メチャ・・・美人で可愛いんやけど」
華奈は、動揺すると関西弁になるようだ。
春奈も、目をぱちくり。
「ほんまや、圭子さんから聞いたけどな、食べ物が喉を通らんとか」
「しかしな、まるでモデルさんみたいや・・・」
ルシェールは、驚いたけれど、やさしい。
「大変やったな、楓ちゃん、必死にダイエットしたんやろ?」
「えらいわあ・・・ほんまに・・・でもな、あまり無理はいかんよ」
楓の瞳は潤んでいる。
「ありがと・・・美人かどうかは、自分ではわからん」
「ダイエットしたら、こうなっただけや」
光が心配そうに楓に声をかけた。
「斎藤さんとのこと?直接的で悪いけれど」
「最初から、はっきりさせたほうがいい」
楓の顔は、真っ赤。
「もーーー!光君、直接的過ぎ・・・」
「それが光君やけど・・・ああ・・・もう・・・」
光
「僕からも、斎藤さんに言うよ、デートしたいんでしょ?」
楓は、その顔を覆い、泣き出した。
「もーーー!また、直接的過ぎ!」
「でも・・・」
「自分から、電話なんて、出来んもの」
「もう・・・恥ずかしゅうて」
「みんなが熊さんなんて言うから・・・」
「うちだって、きれいな姿を斎藤さんに見せたいんや」
「きれいだねって、言ってもらいたいんや」
「あーーー!もう!どないしよ・・・」
「夜も眠れんもの・・・」
由香里が、泣き崩れた楓に声をかけた。
「光君と私たちで、セッティングするから、安心して」
「斎藤君も、楓ちゃんのことが、大好きなの」
「心配しないでいいよ」
「それからダイエットし過ぎで、身体を壊したらデートも出来ないよ」
「うん」と頷く楓に由紀。
「斎藤さんも、楓ちゃんを思って、元気がないくらい」
「相思相愛だよ、ベストカップルだよ」
・・・などなど、特に巫女たちからの絶大な応援が寄せられた楓は、まさに「恋に悩む乙女」状態。
そして、「光君、そして巫女様方、本当にふつつかな私ですが、よろしくお願いいたします」と、実にしおらしく頭を下げ、モニター画面から、その姿を消した。
少し間があった。
「うーん・・・」と、難しげな声を発したのは、光だった。
その光に華奈が質問。
「ねえ、光さん、斎藤さんと楓ちゃんの仲立ちをするだけでしょ?」
「直接二人とも言えないから、チャンスを作ってあげるだけなのに、どうして難しい顔をするの?」
光は、また難しい顔。
「あのさ、斎藤さんの大学は関東」
「楓ちゃんは、まだ未定・・・」
「関西なら長距離恋愛で」
光がそこまで言うと、巫女全員の顔が青くなった。
春奈の声が震えた。
「もし、斎藤君と同じ大学になると、関東・・・そして?」
ソフィーの声に力が無い。
「ここの家に住むから・・・部屋をって、言って来る」
「合格しなくても、予備校通うって、ここに住む」
先ほどまで楓に絶大な応援を送っていた巫女たちの心は、乱れつつあるようだ。




