楓の恋(1)
弁財天と白蛇精、晃子が帰った後は、夕食は華奈の母美紀が家に来て、全員で大散らし寿司。
美紀が意味深な顔。
「何でもね、楓ちゃんに異変が起きたんだって」
光は、気になった。
さすが唯一のいとこ、いつもコテンパンにされるけれど、実は気にしているようだ。
美紀は苦笑い。
「うん、もうすぐ圭子さんから話がある」
その言葉が終るか終わらないうちに、食堂の白い壁が大きなスクリーンとなって、光の奈良の叔母圭子が映った。
「皆様、圭子です、厚顔ワグネリアン退治、本当に楽しく拝見いたしました」
と、にこやかに頭を下げるまではよかった。
圭子は、すぐに「微妙な」な表情に変わった。
「ねえ、光君」と声をかける。
しかし、光は散らし寿司をモグモグとしているので、頷くだけ。
居並ぶ巫女全員から、「結局、鈍感男?」と呆れられている。
圭子はヤレヤレといった顔。
「でね、光君、食べながら聞いて」
「楓が変なの」
春奈が、反応した。
「圭子さん、と言いますと・・・また、食べ過ぎ?」
圭子は、強く首を横に振る。
「いえね、それが逆、食事が喉を通らない」
「一月で、10キロ近くやせたの」
光は、散らし寿司をようやく飲み込んで、反応。
「病気なの?すごい心配、ありえないし、食べるのが大好きで」
「元気もないの?」
圭子
「うん、まずは糖質オフダイエットをするって、ご飯ものを食べない」
「プロテイン何とかをしている」
ルシェールも心配。
「コロコロしていて、何事にも元気な楓ちゃんがねえ・・・」
華奈も難しい顔。
「光さんを騙してまで、アイス食べちゃうのにね、楓ちゃん」
「小さな頃から一緒だったけれど、前代未聞だなあ」
それでも。由香里が気がついた。
「ねえ、圭子さん、もしかして、斎藤君とのこと?」
「となると・・・恋煩い?」
由紀も由香里の意見に同調する。
「そういえば、柔道部から、斎藤さんが少し元気がないって聞いたことがある」「そうなると、斎藤さんも楓ちゃんに、恋煩いかなあ」
他の巫女たちも、大方、そんなところだろうと頷いていると、光が叔母圭子に提案。
「じゃあ、僕がそれとなく、斎藤さんに言ってみようか?」
「せっかく、お互い好きなんだよね」
「二人で健康を害している必要はないし」
圭子は、ホッとした顔。
「なかなかねえ、光君にしか頼めないの」
「我が娘ながら、頑固で口を割らないし」
光が頷いたところで、圭子の顔がスクリーンから消えた。
光と巫女たちが、「そうは言っても難しいよね」と相談していると、
「光君・・・」
という儚げな楓の声。
そして、楓の顔が、スクリーンに大写しとなった。
「え?マジ?超美少女?」
これには、光はもちろん、巫女全員が口あんぐりとなっている。




