厚顔ワグネリアンVS年増組(3)
ワグネリアン宮川と、見眼麗しい若者に変身したソフィーは井の頭公園の池の前に到着した。
「さて、姫君がお待ち申し上げておりますシャトー・ノイシュバンシュタインにございます」
予定通り、ソフィーが変装した見眼麗しい若者は、うやうやしく宮川に頭を下げる。
ワグネリアン宮川は、心の底から感動、喜悦の涙を流す。
「何と美しい湖、その清らかな水の上には、光り輝く白鳥が優雅に」
「そして、湖に浮かぶ霧の向こうには・・・」
「かの聖なる城、ノイシュバンシュタインではないか・・・」
ソフィーがゆるやかに手を動かすと、湖に浮かぶ白鳥が寄って来た。
「それでは、この白鳥が、ノイシュバンシュタインにご案内をいたします」
するとワグネリアン宮川は、ますます涙で目がかすむ。
「なんたるご厚情・・・そこまでに、この私をお求めになられるとは・・・」
その宮川の耳に、「エルザの大聖堂への行列」、そして「結婚行進曲」が鳴り響く。
そうなると、ワグネリアン宮川は、何のためらいもすべきではないと決心。
そのまま、白鳥の背中に手をかけ、またがってしまう。
ワグネリアン宮川は、白鳥の首筋にキス。
「それでは、愛する姫のもとへ」
と、出来る限りの甘い声でささやくと、静かに白鳥は湖の霧の中、ノイシュバンシュタイン城に向けて泳ぎ始める。
さて、ソフィーはその時点で、変身を解く。
そして年増組全員にテレパシー連絡。
「井の頭公園の池なんだけどね」
「足こぎの白鳥の乗り物」
「でもね、底に穴、後は白蛇精の出番」
白蛇精からテレパシー返信。
「あまりワーグナー詳しくないけれど?」
ソフィーは即答。
「心配ない、何を聞いても、ワーグナーに聞こえるように細工済み」
弁財天
「お城で泥をすすっても、デザートの美味しいチョコレートと思うかも」
春奈
「そろそろ沈んだ?」
晃子だけは、ソフィーとのスマホ通信。
「理事会が始まって、宮川さんの理事選出動議が否決された」
「ネット動画の異常な言動が知れ渡っていて」
ソフィーは、にっこり。
「うん、これからもっと、異常な言動が出るよ!期待して!」
さて、ワグネリアン宮川は、「湖」の中央に差し掛かった。
そして、「招待」を受けたノイシュバンシュタイン城を目の前にして、また感涙に咽ぶ。
「おお・・・かのルードヴィヒ二世が、楽聖ワーグナーの芸術に愛をもって献上したノイシュバンシュタイン城」
「まさか、こんなことが・・・聖なる神のご配慮か」
「これも、永年に渡っての、私の功績へのご褒美、うやうやしく受け取らねばならない」
「さあ、神の意を受けた白鳥よ、この栄光ある私をノイシュバンシュタイン城の中に導いておくれ」
「さあ!姫がお待ちだ。ああ!早くお逢いしたい!」
「早く、そのお身体を、この私の胸に・・・」
ワグネリアン宮川が、陶然とその腕を広げた瞬間だった。
「足こぎの白鳥」の乗り物の底が、ぱっくりと開いた。
そして、その穴から、白い大蛇が出現、そのままワグネリアン宮川の身体に絡みついている。




